コウモリ駆除へのダニ使用に関する葛藤のある議論 2012/9/17

      2016/05/18

Courier Mail 2012年6月4日

『Agonising debate over ticks for bat control』

"コウモリ駆除へのダニ使用に関する葛藤のある議論" (英文PDF)
要約/感想:Yumeko Tarusawa

要約

ある専門家によると、ダニを使ってコウモリを殺し、死に至る可能性のあるヘンドラウィルスの拡散を止めることに対し、研究者たちはヒキガエル(Cane toads)の悲劇(注1)以降、生物学的なコントロールを行う事に神経質になっているという。
クイーンズランド州の極北部にあるアサートン(Atherton) 台地では、繁殖期のたびに何千匹ものコウモリが麻痺ダニ(Paralysis Ticks)によって死んでいる。
タウンズビル(Townsville)の専門家、Lee Skerratt 博士は、研究ではこのダニ(paralysis tick、ixodes holocyclusニューサウスウェルスダニ) は、過剰に繁殖しているメガネオオコウモリに対して、生物学的個体数調整方法の厳密な基準に沿わないようであると述べた。しかし、どういう訳か、他の非常に密集しているオオコウモリの集団では(メガネオオコウモリに見られたような)そのような高い死亡率は確認されていない。
「研究者の中には、生物学的個体数調整に言及するのに萎縮する人もいるが、そうすべきではありません。いくつかの方法は非常に効果的でしたし、成功したという話もあります。」と寄生虫学者で、ヒキガエルの研究に取り組んでいるSkerratt 博士は言う。
彼は、粘液腫症(という病気)がなければ、ウサギ(オーストラリアでウサギは害獣)が大量発生していたであろうし、ヒラウチワサボテンに対するマダラメイガの利用は昔から有用な生物学的個体数調整の例として挙げらると言った。
Skerratt 博士は、コウモリたちは、州の北部において野生のタバコを食べるために低空飛行をする際、地上に生息するダニと接触すると考えられてきたと話した。
毎年50羽以上もの孤児となったコウモリを世話している、Tolga コウモリ病院のジェニー マクレーンさんは言います。ダニの麻痺による死よりも12口径の散弾銃による個体数調整の方が好ましい。ここテーブルランド(台地)では、11月をピークに、9月から1月のダニの季節毎に何千匹ものコウモリが死にます。これは東海岸沿いでたくさんのイヌやネコを死に追いやっているものと同じで、土着のダニです。イヌやネコなどの小さな生物が、死ぬ様子を見るのははひどく残酷なものです。彼らの呼吸筋、心臓、肺が麻痺し、何日もかかって死んでいくのです。狙撃によって確実に駆除した方がよりよいでしょう。ダニによる駆除は、彼らに回りくどく、残酷な死をもたらします。
コウモリの愛好家は、いかなる個体数調整の意見にも反対すると言う。「オオコウモリは、知能が高く、人をじっと見つめるような賢い動物で、種の拡散など環境のために重要な仕事をしています。彼らは人々に悪口を言われるような動物なので、誰かが彼らのために立ち上がらないと、と思うのです。」と。
彼女は、「テーブルランドは寄生ダニのホットスポットになっていますが、なぜもっと南の方ではこのような致死率が見られないのかは未だわかっていません。」と言った。

注1)サトウキビの根につく害虫を駆除するためにハワイから導入したヒキガエルがその毒性や在来種とのエサの競合などによって、むしろ害獣となってしまった事件;オーストラリアで最悪の環境災害と言われている

感想

ステークホルダーということばをご存知でしょうか。日本語で言えば、利害関係者と訳され、ある行動に直接、間接的な利害関係を有する者の事を指します。元々は、ビジネス用語だったようですが、私は大学で開講されていた、人と野生動物の軋轢についての講義の中でこの単語を勉強しました。
たとえば、いま日本では増えすぎたシカが問題となっています。この問題に関わる人は、シカの食害に悩む林業、農業関係者から、シカを保護したい動物愛護関係者、誤って線路に入ってきたシカによる事故に悩まされている鉄道関係者など様々です。これらの人々全員が納得する解決策を探すのは非常に困難です。
今回の場合、小さいお子さんをもった家庭の人やイヌネコを飼っている人、コウモリやイヌネコ愛好家の人は、ダニの使用に反対するでしょう。一方、経済的な効率を重視する人はお金のかかる銃による駆除に反対するかもしれませんし、環境保全に力を入れている人は、弾丸による汚染を危惧して、銃の使用に反対するかもしれません。コウモリの極端な愛護家はコウモリを殺す事自体をよしとせず、両方の方法に反対するでしょう。
このように、1つの問題に対して様々な考えの人が存在します。多くの人が納得できる結果を出すには、具体的な数値に基づいた科学的かつ客観的な判定が必要であると感じました。

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