オーストラリアの科学者らが気候変動で危機にある野生動物の再配置を計画 2014/2/26

      2016/05/13

The Guardian(ガーディアン紙) 2013年10月17日

『Australian scientists plan to relocate wildlife threatened by climate change』

"オーストラリアの科学者らが気候変動で危機にある野生動物の再配置を計画"(英文PDF)

担当者:AKANE SHOJI

要約

オーストラリアの研究者らは、気候変動のために住処を失った野生動物をどのように再配置させるかについて、「最初の厳密な枠組み」を作成した。

調査はオーストラリアの4つの大学およびオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)によって学術的に行われ、種を再配置するか否かをどのように決めるのか、どの種を優先的に再導入するのか、そしてそれらをどこに、どうやって移すかということに関しての考案を作成した。

その調査は、種の再配置を評価するための新しいプロセスを求める国際自然保護連合の要求に従っている。

気温の上昇はオーストラリアの生物種に重大な影響を及ぼすと予想されており、気候変動に関する政府間パネルのレポートでは平均気温の2℃~4℃の上昇によってオーストラリアの21%~36%の蝶々が姿を消すと警告されている。一方で、クイーンズランドの適した生息地の半分近くが失われることによって、7%~14%の爬虫類、8%~18%のカエル、10羽に1羽のトリ、そして10%~15%の哺乳類が死に追いやられるであろうといわれている。

クイーンズランド大学の生物科学科に所属し再配置研究の共著者でもあるトレーシー・ロウト氏は、ガーディアン・オーストラリア紙に対し、生物を他の土地に移す事は科学誌者の間で議論を引き起こすものであると語った。

「生物を他の土地に移す事がいったい良い考えであるのかということについては、科学者の間で多くの議論があります。」と、彼女は言った。「最も重要な決断に関する、最も定量的な調査を我々は必要としているのです。」

考案に取り入れられる重要な価値基準は、移動させられることになる動物の現在おかれている状況、新たな生息地で彼らが生息できる見込み、そしてその土地にもともと住んでいた生物種に対しての移動してきた動物の影響である。

「我々は、基本的には生態学的な功罪を見る方法になっています。」と、ロウト氏は言った。「このことは生物種を移動させるかどうかを判断するための有用な参考材料になりますが、同時に決定者による価値判断の必要もあります。」

ロウト氏は言うには、危機にある生物種の再配置の過程はすでに進行中であり、クビカシゲガメ(western swamp tortoise)を急速に乾燥化しているパース周辺の生息地から移動する計画がある。また、暖かい気温に弱いと考えられており、絶滅の危機にあるブーラミス(mountain pygmy possum)を移動する提案もある。

「気候変動は、オーストラリアの多くの生物種に大きな影響を与え、その状況を緩和するための解決策が他にない場合には、再配置が最後の手段になるでしょう。」とロウト氏は言った。「再配置は非常に広い範囲で適用されるかということは分かりませんが、再配置に対する適切な枠組みがなくてはなりません。」

記事を読んで……

絶滅の危機にある生物を他の場所に移動させることについては非常に難しい問題であると思います。記事にあるように、移動させられることになる動物のおかれている状況、新たな生息地で彼らが生息できるのか否か、そしてその土地にもともと住んでいた生物種に対しての影響をしっかりと考察することが重要であると思います。移動する野生動物の現状について、その野生動物が現在の生息地に生息する限り絶滅の危機を逃れられないのであれば、他の土地への移動を考えるのも一つの手であると考えます。しかし、移動後にその生物が移動先の環境に合わずに減少してしまう可能性、または移動させた生物が増えたとしても、移動先にもともとあった生態系を破壊してしまう可能性があるならば、生物の再配置を考えるよりも、域外での保全など、他の道に重点を置く必要もあると思います。どちらにせよ、その繁殖状況、生息適地調査などについての継続したデータ収集が必要になるのだと思います。またデータ収集に関しても、調査方法の選択基準を定め、客観的、定量的なデータを収集することが必要になるのでしょう。
生息地の移動という今回の記事を読んで、私は鳥島でのアホウドリの保護活動についての話を思い出しました。伊豆諸島にある鳥島では、かつては島いっぱいにアホウドリが生息していましたが、羽毛目当ての乱獲によってその数が減少しました。そんなアホウドリに対する保護活動のひとつとして、泥流や地滑りのない場所にコロニーを作らせるため、デコイと呼ばれるアホウドリのレプリカを制作、配置することで安全な場所での新しいコロニーの形成を可能にしたそうです。そのような取り組みによって30年で50羽から5000羽を臨めるほどに、アホウドリの生息数が回復したということでした。また、2008年からアホウドリの小笠原諸島への再導入計画として、聟島へのデコイの設置や移動した雛の人工飼育が行われているそうです。このような保護活動は短い期間に一人でできるものではありません。アホウドリの保護活動についても、何度も予備実験や調査を行い、地元の人々の理解と協力を得るために多くの活動がされています。長い期間での多くの調査、多くの人々の協力がなくては再導入計画は実現できないことだと思います。
生物の移動について、多くのリスクがあるのは事実です。一方で、むやみやたらにやるのではなく、多くのデータ収集や綿密な分析を行った上での移動については成功例もあります。生物の再導入計画について皆さんはどうお考えでしょうか。

参考資料

『アホウドリに夢中』長谷川博著 2006 新日本出版社

公益財団法人 山階鳥類研究所 アホウドリ 復活への展望
http://www.yamashina.or.jp/hp/yomimono/albatross/ahou_mokuji.html

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