絶滅寸前のシロワニ(grey nurse shark) が救助される 2014/10/3

      2016/05/18

Narooma News 2014年6月23日

『Critically endangered grey nurse shark rescued』

"絶滅寸前のシロワニ(grey nurse shark) が救助される" (英文PDF)

担当者:shoji

《要約》

シロワニ(grey nurse shark)は絶滅寸前の種であり、若齢のシロワニがニューサウスウェールズ州マルーブラ (Maroubra) 近くにおいて、顎に刺さってサメの生存を脅かしていた二つの連結型釣り針を顎から取り除くという、専門家チーム独特の救助法で救助された。

第一次産業省(DPI)の上級科学研究員であるニック・オトウェイ博士いわく、1.2メートルの若齢の雌のシロワニはマジックポイントというダイビングポイントにて、釣り針が顎と鰓のつなぎ目に刺さり、それに付いている釣り糸が鰓付近の皮膚を摩擦しているのを地元のダイバーに目撃されていた。

また、顎に刺さった釣り針によって顎が動かず、食べるのが困難になっていた。

「これはとても大変で困難な作業であり、この絶滅寸前の若いサメを救ったチームの専門性と献身に敬意を示します。」とオトウェイ博士は言った。

「これはまさに、シー・ライフ・シドニー水族館、マンリー・シー・ライフ・サンクチュアリーから派遣されたスタッフの皆様のならびに経験豊富なロブ・ジョーンズ獣医師の努力の賜物であり、手順や方法は第一次産業省の代表によって監督されました。」

「第一次産業省は、その絶滅寸前のシロワニを救う処置を確実にするための許可証や、獣医師による治療に役立つ情報を提供することで、この共同作業において重要な役割を担いました。」

「まず最初に、サメはビニール製の『靴下』に誘導されたのち、海面に運ばれ担架に乗せられて、水を満たした船上のタンクに運ばれました。」

「釣り針と釣り糸はサメの顎と鰓の周りから慎重に取り除かれ、サメにはジョーンズ博士が抗生剤を投与しました。」

「処置が終わってから、サメは泳ぎ去っていき、それは素晴らしい光景でした。」

「この若齢のシロワニは1歳齢と思われ、体重はおよそ10キログラムで、性成熟する10~12歳齢にはまだ及ばない雌でした。」

「この大きさのサメは捕獲や取扱いによるストレスに非常に影響を受けやすく、ある状況下では、彼らの血液生化学状態を変化させてしまい死に至らせてします。」

「そのような変化の回復には数日を要し、当然、マジックポイントでダイビングを楽しむダイバーたちには週末にかけて目撃されませんでした。」

「現在そのサメが完全な回復に向かっていると願っています。」

マジックポイントはニューサウスウェールズ州の海岸沿いにあるシロワニの9つの重要な生息地のうちの一つです。2002年に指定され、いくつかの種類の釣りやダイビングの実施が制限されており、この生物種の保護強化になっています。

「シロワニはニューサウスウェルーズ州政府が1984年に種の保護を宣言した際、世界で初めて保護されたサメとなりました。現在は連邦政府の法律のもと、他の州でも保護されています。」とオトウェイ博士は言う。

「ニューサウスウェールズ州政府はこの現在絶滅寸前となった種の保護に関わり続けており、ニューサウスウェールズ州海域には1500匹程しかいないと考えられています。」

記事を読んで…

傷ついた生物の治療や保護についてはたくさんの困難が伴うと思います。今回の記事を読み、船を出しての海中のサメの捕獲、ストレスをかけないように治療することなど、専門的な知識や多くの人の連携がないと出来ないことなのだと感じました。
また、今回の記事はサメについて調べる良い機会になりました。普段暮らしていて、あまり見かけることのないサメですが、日本でも古くから、食用の肉、肝臓を使った薬品、化粧品など多様な使い方がされてきたようです。
そのようにヒトの役に立ってきたサメですが、その数は急激に減っています。その原因としては釣り、延縄などによる漁獲、スポーツフィッシング、海水浴客の保護のためのサメよけネットに引っかかることなどがあります。同じ種類のサメでも縄張りをもつものや長期に移動をするものがいるため、その生息数や減少の程度を定量化することは困難であるそうです。空を移動する渡り鳥の把握が難しいように、どこまでもつながっている点は、海洋の調査や保全を困難にする原因の一つなのかもしれません。
最近行われた、IUCN(国際自然保護連合)のサメ専門家グループの調査では、世界中の1/4のサメ類とエイ類が絶滅の危機に瀕しているという結果が出ています。乱獲が主な脅威となっており、サメ、エイ、ギンザメ類は成長が遅く、子どもを産む数も少ないため、乱獲の影響を受けやすいそうです。他の魚を捕るため網で混獲されたサメやエイが全捕獲量の大部分を占めるものの、それらが取引される市場が成長していることや、漁業資源の枯渇が、このような「混獲」が歓迎される要因になっているということでした。
以上のように、サメの減少は漁獲と関係が深いことが分かります。地域の生物を持続的に保護していくにはそこに住む方々の理解が必要だと思います。サメの保護に関しては、その地域で漁業を営む方々の理解と協力がないといけないのではないでしょうか。その例として、中米のユカタン半島にあるベリーズという国にあるプエラセンシアという漁村での取り組みがあります。ここはジンベエザメの数少ない産卵海域になっていましたが、乱獲によって魚が減少しました。そこで漁民の方々自身が立ち上がりFONを設立、2003年2月に世界で初めてのジンベエザメの産卵保護地域が指定されました。このような海洋保護区については漁が出来なくなるという反対意見もあるものの、保護区での漁業資源の回復も有効手段であるという考え方を主張する研究者もおり、世界的には叙々にその面積は増えているそうです。しかし、陸に比べてその面積の割合は陸地に比べて極めて小さいのが現状でもあるようです。
ヒトが生きていく以上、漁業で生計をたてている方々がサメを含めた魚類の捕獲をゼロにするということは困難であると思います。しかし、乱獲という形で無秩序に漁業を行えばその環境を壊すことにつながります。必要な分だけ捕獲し、同時にサメの生きていける環境を整えていくことで、持続可能な共生が実現できるのではないでしょうか。

参考

「IUCN news story ‘A quarter of sharks and rays threatened with extinction’21 January 2014」
http://www.iucn.org/news_homepage/?14311/A-quarter-of-sharks-and-rays-threatened-with-extinction

『ものと人間の文化史 35・鮫』 矢野憲一著 1979年 法政大学出版局
『知られざる動物の世界 11 サメのなかま』 山口敦子監修 2013年 朝倉書店
『生物多様性とは何か』 井田徹治著 2010年 岩波新書

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