家族の引越しの際に立ち退かされるコアラたち 2011/12/10

      2016/05/26

Gold Coast Bulletin2010年9月30日

『Koalas evicted as families move in』

家族の引越しの際に立ち退かされるコアラたち(英文PDF)
要約・感想:AKANE SHOJI

要約

ユーカリの木にいるコアラ、フィル(Phil)を見上げると、あなたが何エーカーもの灌木の茂みの真ん中、開発地から遥か遠くにいるのを容易に想像できるだろう。
しかし、ケイティ・ペリーのヒット曲「キス・ア・ガール」が近くの建築業者のステレオから流れてくると、ゴールドコーストのコアラの個体数が困った状態にある理由が甲高い歌詞一つひとつと共に、ひしひしと感じとれる。
フィルと彼の近所に住むカースティはクーメラの新興住宅地から数メートルの所に住んでおり、わずかに残された彼らの灌木の茂みももうすぐなくなってしまうだろう。
しかし有り難いことに、彼らは数週間以内にネラングの西、ロワー・ビーチモントにある市の指定保護地区に移動される60頭のコアラに合流する予定である。
コアラ保護計画の責任者であるジョン・キャラハン氏は土着の動物の移動を最終手段として行っているが、この刷新的な計画が90パーセントの成功率を達成しているということに元気づけられてきた。
「まだ日は浅いが、この計画が機能しているということに疑いはない。」と彼は話した。
引越しのストレスがコアラの死を招くかもしれない一方で、あるものは病気に苛まれたり、またあるものは犬にやられたり、車に轢かれたりした。
ゴールドコースト市の市議会議員ピーター・ヤング氏は「不動産開発によって環境が失われているせいで、この計画が必要になっているということは『不幸』である。」と語った。
「しかし、少なくとも我々は自分たちが適切な量の財源をそれに注いできたと確信できる。」と彼は言った。
「徹底性と科学的性質のアプローチが、この計画が上手くいくのかどうかを知る基礎となる。」
「この計画は上手くいっているように見える、しかし我々は何年かの間は結果についての正確な判断を下すことはできないだろう。」
この計画のための240万ドルの市からの資金には、健康診断、科学的調査、首輪型の無線機、そしてコアラの個体数モニタリングの費用も含まれている。
この計画はこの手の計画のなかでクイーンズランド州において唯一のものであり、結果は州政府によって綿密に監視されている。
キャラハン氏と彼のチームは環境資源管理局から100頭のコアラを移動させる許可を得ており、州政府はより多くのコアラの移動を認可する必要があるようだ。
「私たちは合計200頭に及ぶ東クーメラのコアラを移動させる必要があるかもしれない。」と彼は語った。

記事を読んで……

この記事を読んで、コアラの住む場所と人の住む場所について考えさせられました。AKF(オーストラリアコアラ基金)によると、ヨーロッパからの入植以降、約80%のコアラの生息地が失われ、残る20%のほとんどが法的に保護されていない個人の所有地となっている上に、それらも土地開発として使用される予定となっているそうです。このようにコアラの住む場所と人の住む場所が接近しているのが現状のようで、実際AJWCEFの実習にて、ブリスベンではビルや駅のすぐ脇の木にコアラがいたのが印象的だったのを覚えています。
コアラが家のすぐ近くや庭までやってくるということもあるようですが、ここで忘れてはならないと思うことが一つあります。それは彼等が人の住むところにやってくるのではなく、彼等の住んでいる所に人が家をつくって住みだしたということです。コアラたちにとっては、もともと自分たちがいた場所で生活を続けているだけなのでしょう。この記事にあるように、彼等が住むところに人が住み、コアラ達が別の場所に移動させられなければならないという現実は、やはり物悲しいものがあります。
2011年9月22日に発表された報告書によると、入植時の1788年以前には1000万頭以上いたと考えられているコアラが、現在は推定4万3515頭にまで減少しているそうです。コアラの減少理由としては、干ばつ、森林伐採、都市開発、山火事、病気、犬に襲われる、自動車に轢かれるなどがあります。(参考:AFPBB NEWS)
このような現状をどう打開するかということを考え、実行することは重要なことです。これについては前のブログの記事でもいわれていたように、家庭では犬をきちんとつないでおく、プールにロープをはっておく、庭の木の植え方にしてもコアラが木から木へ地面につかずに移動できるようにする、など様々な対策があります。一方、もう少し大きな規模で出来ることとして、コアラの移動線を作る、コアラの好む木を植林するなどが考えられます。そんな中、現在のコアラの生息地自体が住宅建設で失われてしまう場合、記事にあるようにコアラを安全な場所に避難させるのも一つの手なのかもしれません。
今回この記事を読んで二つ注目したことがあります。一つ目は、90パーセントという高い成功率です。これは驚くべき値です。しかし、記事にあるように早急に結果を見極めるのは困難なように思われます。指定地区にコアラを移動させるというのは、その時点ではコアラの保護につながるかもしれませんが、長い目でみると近親交配により、区域内のコアラの遺伝的多様性の喪失に繋がるという可能性もあるように思います。個体ではなく「種」を守るということを考えると、長期にわたる調査や対応は必要そうです。
この記事を読んでもう一つ注目したのは、公の機関が率先してこの計画を行っているという点です。野生動物保護の活動において、国や県などの行政による規則や規定によって保護がうまく進まないということも、少なからずあるようです。民間と州政府の連携の例としては、コアラレスキューの方々がコアラの生息地と線路建設予定地が重なっていることを調査、政府に報告し、政府はこれを受けて線路の位置を当初の予定域からずらした、という話を実習中に伺いました。このような例は、民間側の綿密な調査と共に、それを受け入れる政府の意向がなければ実現しなかったように思います。私は、行政と地域の人々が一丸となってこそ、環境保護も上手くいくのだと思います。皆さんは、これについてどうお考えでしょうか。
野生動物は野生動物で放っておいてよいという考えもありますが、野生動物を国や国民の私有財産として守り、ともに生きいこうという方針は純粋に素敵だな、とそう思うのです。

参考サイト
「オーストラリアコアラ基金」https://www.savethekoala.com/japan/jpindex.php
「オーストラリアコアラ基金 英語版サイトAustralian Koala Foundation」
https://www.savethekoala.com/index.html
「AFPBB NEWS」
『コアラ激減、「危急種」指定を政府に要請 オーストラリア』
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2830220/7815227
『オーストラリア、放牧地の開墾で多くの生物が危機に コアラも大量に死亡』
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2514452/3301796

 - AJWCEFブログ