子クジラがシャークネットから救出され、NSWのビーチの安全に関した議論が激している 2017/5/17

   

『IN THE NEWS: Whale calf rescued from shark net as debate rages over NSW beach safety』(英文PDF)
The Sydney Morning Herald 2016年10月15日

担当者:EMI

《要約》

Baird(州首相が率いる)ニューサウスウェルズ州政府による州北部沿岸におけるシャークネットへの反対を棄却する決定は、同州政府内の省の提案と科学的合意を無視している、と専門家は語る。
ゴールドコーストのCoolangatta近くにあるシャークネットに絡まっている若いザトウクジラとともに、シャークネットの想定外の影響が土曜日に報道された。そのクジラの母親は、パトロールが到着しネットを切って子クジラを自由にするのに充分な時間、子クジラが海面近くにいられるように助けた。

先週、またサメによる攻撃が起こった。- 2015年初め以来、バリナからバイロン(Ballina-Byron) 地域だけで6回目となるこの被害は、Mike Baird州首相にとって我慢の限界を超えさせるものとなった。水曜日に、彼は、“すべてにおいて人間の生命を優先する”ときだ、と、自身が態度を変えた理由を説明した。

1937年にシドニーで初めてネットが導入されて以来、ネットが張られた51か所の州内にある海岸のうち、不慮の死亡事故の記録は1951年の一件だけである。だがしかし、33回のいわゆる正当な理由のない攻撃があり、そのいくつかは深刻なものであった。

写真: ゴールドコーストでシャークネットに絡まった若いクジラが、ネットを切られ自由になった。

“(訳注:我々人間はサメから身を守る)なんらかの防御が必要だ”と、バリーナのサーフ店オーナーであり、シャークネットの支持者であるRichard Becers氏は語った。

Beckers氏は、2週間に起きた2つの事件の後10万ドル分の注文のキャンセルがあったと語った。サーファー達がどこかほかのより安全と思われるビーチに行ってしまったため、ボディボードとサーフボードの売り上げは約90%急降下した。

匿名希望の別の地元の人は、政府が(サメによる)攻撃を止める対策をしないことによって、“私たちの命を賭けたロシアンルーレットをしている”のだと述べている。

自身も熱心なサーファーであるBaird氏(州首相)は先週まで、シャークネット(が必要だという)要求に抵抗していた。むしろ、(シャークネットは)過去何年にも渡って何千もの海の生物を殺してはいても、シャークネットだけで海岸をより安全にしているという証拠はほとんどないと主張する科学者たちからのアドバイスを聞き入れていた。

写真:シャークネットとドラムラインは海洋生物へ大きな被害を与えてはいるが、海岸の安全に効果があるかどうかは疑わしい、と専門家は語る。

Coolongatta海岸では、土曜日の朝に、4メートルのザトウクジラが難なく救出されたとABC(訳注:オーストラリア放送局)が報道した。
Coolongatta海岸で、4メートルのザトウクジラは、尾が引っかかり身動きが取れなくなっていた。

写真:シャークネットは大抵、サメが(ネットを)回避するに充分なスペースを与えている。

子クジラとその母親のどちらもが、“とても落ち着いていた”とクイーンズランド州舟艇漁業パトロール(Queensland Boating and Fisheries Patrol)のスポークスマンであるMark Saul氏は国営放送局(訳注:ABC)に語った。
“母親はネットにわずかに入り込んで子クジラを海面に保っていて、よくやっていました”とSaul氏は語った。

“何箇所か切ったのち、良い健康状態で、子クジラは母親と南の方へ泳いでいきました。”

‘データに基づいていない’
NSW州の政策の破棄(反転)は、政治的な判断であってデータに基づいたものではないとマッコーリー大学(Macquarie)の準教授であるCulum Brown氏は語った。“かかる費用は周知のことであり、利益の観点からすると僅かである。”

現在設置されているネットは、通常は長さ150メートル、深さ約6メートルで、その上や下からサメが避けることができる十分なスペースがある。

今年のこれまでの国会喚問は、第一次産業省(Departmen of Primary Industries)に現在のシャークネットをさらに生態学的に持続可能な技術をともなったものに取り替えることを勧めた。

ジェームズクック(James Cook)大学の持続可能な熱帯漁業・農業センター(Centre for Sustainable Tropical Fisheries and Aquaculture) のColin Simpfendorfer氏は、ホオジロザメに関しては急激な個体数減少を回復させる事を目指して20年間保護されてきたと述べた。

“肝心なことは、ネットがサメを捕まえるということです”とSimpfendorfer教授は述べた。“人々が泳ぎに行く場所のサメの個体数を減らそうとしています。”

189匹の海洋生物が、2014~2015年の間に既存のネットに捕まり、それらは44匹のターゲットとなるサメ(ホオジロザメ、イタチザメ、メジロザメ)と、無害なサメ、イルカやウミガメを含んでいた。
それらのうち116匹は、政府のデータによると解放する前に死んでしまった。

過去百年において、サメによる死亡者数は平均で1.3人であり、タロンガ(Taronga) 動物園のshark fileによると過去五年間で2人にまで上昇している。オーストラリアの海岸には年間に推定1億人が訪れている。

それに対して、2013年には5人が犬によって、44人がベッドから落下して亡くなっているとオーストラリア統計局は語っている。

“サメよりも、ハチやウマに殺される確率のほうが高いです。”とBrown教授は述べた。

“殺害ネット”
Ballina市長のDavid Wright氏は、依然として、シャークネットは東オーストラリアの一番豊かな海洋生物たちにダメージを与えると反対している。

水曜日にホオジロザメと思われるサメに噛まれた25歳のサーファーEven Seneca Rus氏ですら、シャークネットに関して複雑な見解を持っている。APP通信によると、Channel 9(オーストラリアの全国的な放送局)に彼は“私はこの件に関してどちらにつくべきなのか分からない”と語ったという。

Wright氏(Ballina市長)によると、Baird州首相は今週、動物が掛かったときにアラートが送られる“smart nets(賢いネット)”を試すと彼に断言した。動物がまだ生きている場合には、動物を解放するためにボートを素早く派遣できる。

ナショナルジオグラフィック(National Geographic)とキャノンと共にオーストラリアに訪れているアメリカの自然保護活動家のJim Abernethy氏は、シャークネットは“政治家が市民に自分たちが問題解決に取り組んでいると信じさせるための方法” だったと語った。

ケージ無しでサメの近くまでダイビングする事を生涯の仕事としてきたAbernethy氏は、、“食物連鎖の頂点である捕食者”の数を激減させることは海の生態系全体を脅かすと警告した。

“もし我々がかつてない速度でサメを排除し続けたら、まもなく海は機能しなくなるだろう”と彼は語った。

シャークネットの唯一の利益はもしかすると、泳ぐ人たちを“さらに快適”に感じさせる心理的なことだけかもしれない、とBrown教授は語った。

サメがどのように振る舞うかをより理解することと、サメに噛まれる危険性があるときにサーファーに注意喚起する方法を考案することに焦点を当てて尽力するべきであると語った。

<感想>
海に訪れる“人”の安全が大切であることは当たり前なことだと思いますが、サメ以外の動物やベッドからの転落などによって亡くなる人の方がサメによる事故よりも多い、というデータを見ると、サメに対してそこまで過剰に規制する必要もないように感じてきます。
生態系を守る上でも捕食者の存在は必須であると思うので、海洋生物の保護と人間の保護を同時に行う政策や方法を生み出すことができればベストかと思います。記事を読んだ限りでは、シャークネットの是非の二つの意見の間を取るには、シャークネットの質(文中にあったような、何か海洋生物が引っかかった際の情報伝達がよりスムーズに行われる等)を向上させることが一番の近道であるように思いました。

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