絶滅危惧種シリーズ5 急速に消えゆく種たち 2012/10/19

      2016/05/18

CourierMail 2011年3月19日

Species die out at a rapid rate『Indian Tiger』

"絶滅危惧種シリーズ5 急速に消えゆく種たち" (英文PDF)
要約/感想:Yumeko Tarusawa

〈要約〉

インドに棲息するベンガルトラ、Indian Tiger(インドトラ)

研究者達は、文化的に重要で美しい“ジャングルの王者”が、世界中に3200頭ほどしか残存していないという衝撃的な統計結果を示しました。

食物連鎖の頂点に立つトラたちは、アジアの大型ネコ科動物の中で最大です。

WWFによると、「しかし、彼らは同時に世界で最も絶滅が危惧されている種のひとつである。」とのことです。

100万年以上も前から、彼らはトルコ東部から東にロシア、北にシベリア、南にバリまでの範囲をあちこち歩き回っていました。しかし、20世紀の終わりまでに、バリトラ、ジャワトラ、カスピトラは絶滅してしまいました。

残存する6亜種も、おおくは森林伐採や違法な野生動物取引、密猟、人間との衝突により同じ運命を辿るでしょう。もしこの傾向が続けば今後12年の内に絶滅してしまうかもしれません。

WWFのLydia Gaskell氏によると、「WWFでは、保護の象徴としての35優先種のうちの1種としてトラをリストアップしている。」とのことです。WWFはトラの未来について「もし、我々が野生のトラたちの深刻な状況に対して対策を取らなかったり、そのほとんどは野生動物保護区の外にありますが、トラたちと居住地を共有するコミュニティへの対応を怠ったりすれば、私たちは生涯における世界の自然の驚異の一つが絶滅する瞬間の目撃者となるでしょう。」と、はっきりとした立場を表明しています。

環境保護論者の多くは、今までのところ野生動物保護区の設立と保護、そして密輸入にたいする国際的な厳しい法規制がトラの生存の鍵となってきたことに賛成しています。

しかし、保護ジャーナリストのCraig Kasnoff氏が主張しているように、野生動物保護と生息地保全は単独の解決法ではなく、トラ保護のための多面的な戦略の一部なのです。

〈感想〉

今回の記事には、トラが直面する問題に加え、WWFのスタッフの話が多く盛り込まれていました。そこで、インドにおけるトラの現状とWWFなどの団体が野生動物保護に果たす役割について考えてみたいと思います。そして最後には、日本における野生動物の現状についても触れてみたいと思います。

トラの現状についてですが、まず、インドに限らず世界各地でトラは密猟の被害にあっています。原因は、トラの骨などが、その効能いかんにかかわらず、漢方薬として珍重されていること、毛皮の需要があることなどです。

次に、インドではトラと人間の軋轢が多くみられます。これは日本の各地でも問題となっているものですが、主たる原因は人間社会と自然界との緩衝地帯が無くなったことにあると思います。インドでは開発が進んでおり、森林が開拓されています。これにより、それまでトラなどの野生動物の生息地であった場所にまで人間の手が入り、緩衝地帯が無くなっています。トラたちは生息地をおわれただけでなく、家畜を襲うようになりました。これにより現地ではトラが害獣扱いされ、毒殺されるなどしています。

続いて、WWFなどの団体が野生動物の保護に果たす役割について考えます。WWFは、トラの保護にむけて以下の対策を行っています。トラの生息数や生息環境、現地での問題などの現状評価・密猟の規制や保護管理活動(※1)、保護に関わる人材育成や技術支援と現地住民の支援、保護に関する広報活動などです。また、密輸入や密猟はIUCNとの共同機関(※2)を設立し、取り締まっています。

環境保護の立場からみれば、トラという種の絶滅による生物多様性や地域の生態系への影響は大きく、絶滅は避けなければならない問題です。しかし、現地の住民からみれば、生活の糧となる家畜を殺したり、人間に害を与えたりするトラは邪魔者でしかないという意見もあるかもしれません。そこで、インドにおけるトラの保護では現地住民に対する支援が重要となると思います。トラの生息域と人間の活動域の間に緩衝地帯を設け、トラによる人や家畜への被害を軽減したり、被害にあった住民に支援を行ったりすることで事態の改善が見込まれるのではないでしょうか。また、広報、教育普及活動も重要であると思います。学校教育の中に、生物多様性保護の重要性などの講義を取り入れることも効果的かもしれません。

さて、これまでは海外の話に着目してきましたが、日本の野生動物はどのような状況にあるのでしょうか。日本では、農林業従事者の減少により、森林が荒廃したり耕作放棄地が増加したりしています。これらが原因で今まで存在していた野生動物との緩衝地帯(例;里山)がなくなったことが、日本における野生鳥獣害の原因のひとつとされています。森林の荒廃などが原因である点はインドとは異なりますが、日本でも人と野生動物との緩衝地帯がなくなったことによる農作物への鳥獣害は問題となっています。

そこで、農林水産省は、2007年に鳥獣被害防止特措法(※3)を制定し、基本指針を示しました。農林水産省では、“はこわな”の導入や広葉樹林の育成の推進、地域における技術指導員の育成などの施策に対して支援を行っています。各市町村は、この指針を基に被害防止に取り組んでいます。

また、私は大学の講義で日本における野生動物管理について学びました。これは、鳥獣被害に関する教育活動の一環であると思います。このように、理論的に被害について学ぶことで、誤った知識による誤った管理を防ぎ、人間との軋轢を減少させることができるのではないかと思っています。

みなさんは、人間と野生動物の共存についてどのように考えますか。よろしければご意見をお聞かせください。

※1
WWF Japan
『Wildlife Crime Scorecard: Assessing Compliance with and Enforcement of CITES Commitments for Tigers, Rhinos and Elephants
(野生生物犯罪に関するスコアカード:象牙、犀角、虎骨取引をCITESで規制するための法令遵守と法施行)』
2012.7.23 WWF
http://www.wwf.or.jp/activities/2012/07/1077630.html
※2
WWF Japan
トラフィック・ネットワーク
http://www.wwf.or.jp/activities/wildlife/cat1301/
※3
農林水産省HP
鳥獣被害対策コーナー
http://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/index.html

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