ウォンバットの野生復帰事業によりその生息数は増えたが、気温上昇や交通事故によってその数は頭打ちになっている 2019/1/8

      2019/01/08

『Wombat rewilding project lifts numbers but hotter weather, traffic has them staying put』(英文PDF)

ABC Radio 2018年6月13日
文:Luke Wong

担当者:Akane Shoji

≪要約≫
野生復帰事業によりウォンバットの生息数の増加がみられているが、天候、草地の問題や交通事故の危険などによって、この動きが押しとどめられている。

親を亡くした13頭のウォンバットを野生に返す取組みが2015年にシドニーの西部にあるマルゴアのバイオバンク施設で行われ、このような取組みは推定19種の動物に拡大してきた。

「安定して生育できる生息数に到達できたことは本当に素晴らしいことです」と、オーストラリアの政府機関Greater Sydney Local Land Servicesの生物多様性担当職員であるピーター・リッジウェイは言う。

大人の有袋類は最初のうちは人がつくった巣穴を住処にしていたが、野生復帰事業が始まってからは、彼らは自ら掘った30個ほどの穴を住処にした。

野生動物用のセンサーカメラで彼らの行動を撮影し、ボランティアが画像とデータを整理してきた。

「我々は10万6千枚の写真を現場で撮影してきたので、これらは膨大な情報のかたまりです」とリッジウェイ氏は言う。

暑さを感じる動物たち

しかし、カメラに搭載されている温度センサーは心配な傾向もとらえている。

「30℃を超えるとマルゴアのウォンバットは巣穴から全くでてこない」とリッジウェイ氏は語った。

「ここでは長いこと夜に30℃より低い気温にまで落ち込まず、ウォンバットはエサを食べに出てこないのです。」

リッジウェイ氏が引用したオーストラリア気象庁の記録によると、1970年以降シドニーで35℃を超えた日数は2倍以上になっている。

「ですので、我々はウォンバットがシドニー西部の都市のヒートアイランド現象による被害を受けるのではないかということに非常に気にしています。」

生息域が分断されることによる問題

生態学者のリンダ・ブラウンは、自然保護活動をしている非営利組織であるCumberland Land Conservancyの一員であり、ここではウォンバットたちの野生復帰事業が実施されているバイオバンク施設の近くの2つの土地を管理している。

彼女いわく、ブルー・マウンテンズ国立公園からきたウォンバットはひとところに現れ始めており、バイオバンクのウォンバットは他のウォンバットがやってくるのを見たことがない。

そして彼女はウォンバットたちによって周辺環境が維持されている恩恵を目の当たりにしている。

「ウォンバットは草食動物であり、彼らは草や木の皮を好んでたべます、それによって草で鬱蒼とした場所が開けた場所に維持されるのです。」

「彼らが草を食べることによってつくられた土地はグリーンピックと呼ばれ、十分に栄養を含んだ草があるので他の草食動物にとって非常によい恩恵をもたらします。」

マルゴアの景観を手入れするマルゴアバレーランドケアのボランティアは、ランタナ(クマツヅラ科の常緑小低木)、イボタノキ(モクセイ科の落葉低木)やアフリカオリーブを含む草を取り除く活動をしてきており、これによって土地に栄養分が蓄えられ、動物たちにとってアクセスしやすい餌場となる。

しかし、ブラウン氏はウォンバットの自然の生息地をよくしていくためには、残された自然景観を農村や都市開発から守らなくてはいけないと言った。

「残念なことに国有林であるカンバーランド・プレイン・ウッドランドはその5%しか残っておらず、これら多くの区域は他の区域とのつながりをもっていないため、ウォンバットは生息していません。」

道路の脇を通る危険

ウォンバットの移動を妨げる危険因子の一つとして大きな道路の交通がある。ブランウン氏は、近年の乾燥状況によって多くの動物が餌を探しに道路脇に行くことを余儀なくされていると言った。死亡した3頭のウォンバットは最近道沿いにいたのが記録されているが、他のウォンバットはその道の下を通っている痕跡がある。

あるウォンバットは排水パイプを見つけ、そのパイプを利用して道の反対側の緑の多い牧草地まで行っているとリッジウェイ氏は説明した。

「これはとてもすごいことで、ロードキルを減らす試みができるということを示しています。」

「我々は西部シドニーを横切るいくつかの道におけるロードキルのマップを作り始めており、これらの道にウォンバットのロードキルのリスクを減らすための改良を施せるかどうか調べています。

記事を読んで… AKANE SHOJI
今回の記事を読んで、人の生活と上手くバランスを取って野生動物の復帰をさせることは大変なことであるとあらためて思いました。記事ではロードキルの話題が出てきましたが、日本でも場所によっては車が必需品で道路の整備によって生活が便利になっているところが多くあります。それと同時に野生動物が道路を通ることを余儀なくされ、車に轢かれることも少なくありません。日本でも、イリオモテヤマネコ、ツシマヤマネコ、ヤンバルクイナ、アマミノクロウサギなど多くの希少な生きもののロードキルが問題となっています。このような問題に対しては野生動物が事故に遭わないような取組みが行われています。例えば道路に橋やトンネルを設置し野生動物が道路を通過せずに道路を横断できるようにしたり、野生動物がドライバーに認識されやすいように草刈りが実施されています。さらに、対策にはこのような環境整備のみではなく、多くの人の理解と意識も重要です。例えば運転手への注意喚起のロードキル防止キャンペーンの実施や野生動物にやさしい安全運転を宣言していただいた人にステッカーを配布する等の対策が実施されています。
今後も人と動物がよいバランスをとって生活できる環境が整えられるとともに、多くの人にも意識が根付くような試みをしていけたらと思います。

<参考文献>
西表野生生物保護センターホームページ
http://iwcc.a.la9.jp/ym_kiki.htm

対馬野生生物保護センターホームページ
https://kyushu.env.go.jp/twcc/blog/index.html

やんばる野生生物保護センターホームページ
http://www.ufugi-yambaru.com/torikumi/taisaku.html

奄美野生生物保護センターホームページ
http://amami-wcc.net/efforts/rare-species/

 

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