NEWSLETTER Vol.15 2017年 5月

   

20175月 Vol.15に掲載された記事の中から、「野生動物と交通事故」の記事をご紹介します。

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~野生動物と交通事故~

都市化による生息地の喪失によって多くの生物が脅威にさられています。住む場所や食料を失うといった直接的な影響ばかりではなRESIZED CASSOWARRY CROPく、道路や線路などによって生息地が断片化される事によっても、交通事故という大きな被害が起きています。 大きな影響を受けている生物の一つにヒクイドリ(Southern Cassowarry)という希少な鳥がいます。彼らは、エミューに次いでオーストラリアで二番目に大きな飛べない鳥です。クイーンズランド州北東部の熱帯雨林に生息し、鮮やかな青い首と赤い肉垂はとても美しく、デイビッドフレイ野生動物公園でも多くの訪問者を魅了しています。

彼らは種子散布者であり、雨林の生物多様性を維持するために非常に重要な生物です。彼らは238種類の植物を食べるといわれ、大きな果実も丸呑みできる雨林で唯一の生物です。果肉だけが消化され、種子は消化器官を通って排出されます。中にはヒクイドリの消化管を通過しなければ発芽しない植物もあります。また、雨林の数少ない種子散布者の中でも、広範囲に散布できるのはヒクイドリだけであり、雨林とそこに生息する生物の生存はヒクイドリにかかっているとも言えます。

cassowarry sign.editedしかし、このように雨林の生物多様性の鍵として保護の必要性が非常に高いとされる彼らですら、残念ながらオーストラリアでは絶滅危惧種として登録されています。野生の生息数はわずか約2000羽と考えられており、最も高い密度で生息すると言われているカソワリ(ヒクイドリ)コーストと名づけられたミッションビーチで交通事故が多発しています。特に死亡事故が多いエリアでは、制限速度が時速100㎞から80㎞まで下げられました。また、運転手たちに速度を落とすよう注意を呼び掛ける「ヒクイドリ横断」の標識も多く設置されていますが、あまりうまく機能していないと言われています。クイーンズランド州政府は2015年に20羽以上の死亡が記録された為、追跡装置を使用した新たな技術を開発することを発表しました。それは、Intelligent Transport Systemと呼ばれる装置をヒクイドリに装着させ、鳥が道路に近づいた際に標識に警告を出させるものだと言います。この新技術が現状の改善に少しでも役立つ事が切望されています。

もちろん、交通事故はヒクイドリに限った事ではなく、多くの生物を負傷されたり死に至らしめたりしています。CIMG7774ヒクイドリの対策のように、野生動物に注意するよう運転手に促す標識が数多く設置されています。野生動物が幹線道路に出られないようにするフェンスや、動物が道路を横断するための地下道や陸橋などの緑のコリドーを設置するなど、様々な工夫が施されています。しかし、全ての道路に設置する事が困難であることや、野生動物がそうした施設が自分のために作られているということを理解できないために利用しないなど、万全とは言えません。やはり根本的には、生息地を断片化させない事が重要です。

写真まとめ
生息地の喪失や断片化は、日本を含む世界中の至るところで起こっています。今回ご紹介したヒクイドリは雨林の生物多様性の維持に不可欠な重要な生物ですが、もちろんそれ以外の生物も生物多様性にとって重要です。 そして、豊かな生物多様性を持つ健全な自然環境は、私たち人間にとっても、経済活動を含め、日々の生活を支える最も重要な基礎だと言えます。DSC_0991 bird on road

都市計画の中により良い共存を目指すという視点が必要であり、一人ひとりが関心を持ち、束となって取り組む事が重要です。実際に、必ずしも専門家である必要はないと励ましてくれる良い例があります。絶滅が危惧されている生物を含む様々な生物の生息地となっている森林地帯に線路が敷かれようとしていた際に、地元住民たちが生物の目撃マップを作成して政府に提出した事によって、生息地の分断を回避する事に成功したのです。私たちが諦める事なく関心を持ち続ける事が最初の一歩となると信じています。

AJWCEFはこれからもより良い共存を共に考える機会を提供していきます!
(文:Toshimi Hirano)

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