NEWSLETTER Vol. 3 2011 年 4月

      2016/05/03

モギルコアラ病院のコーナー 命をつなぐユーカリ ~ラッドフォードの旅~

radfordここモギルコアラ病院には、毎日のように怪我や病気をしたコアラが運ばれてきます。しかし、全てのコアラが入院して元気に森に帰れる訳ではありません。運ばれて来た時点で、すでに生きる力もなく顔を伏せているコアラ、元気になると信じて看病しても回復できないコアラがたくさんいます。
ラッドフォードも力なく小さな生命を静かに呼吸するコアラの一頭でした。

ラッドフォードが犬に咬まれて運ばれて来たのはとても暑い日の午後でした。胴体の毛が犬の唾液でモコモコになって汚れてはいましたが、目立った外傷はありませんでした。とりあえず一晩は様子を見ることになり、床にいても届くようにユーカリをセッティングしたICUの小さなケージに運ばれました。診察の為に打たれた鎮静剤が効いて、ぐったりです。
明日の朝には、とまり木に登ってユーカリを食べていてくれれば良いな…そう願って皆は病院を後にしました。

翌朝、鎮静剤はとっくに切れているはずなのに、ラッドフォードは昨日サヨナラした時と全く同じ体勢でぐったりしているではありませんか!まさか!そんなことはない、そんなことはない!そーっと名前を呼びながら近づくと、ゆっくりと薄目を開けました。良かった…!少しだけ安心しました。でも、その衰弱ぶりはとても安心できたものではありません。当然、このまま入院させて良いのか、安楽死も視野にいれた会話がレンジャーや獣医師の間で始まりました。

そんな傍ら、小さな希望を胸にラッドフォードのケージを掃除するケアラーたち。手付かずになっている昨日のユーカリを口元に寄せると、ゆっくり目を開け、少し食べました。「食べてるよ!頑張ろうよ!」ケアラーの想いと、ラッドフォードの生きたいという姿勢におされて「じゃあ、もう一日様子をみよう!」という事になりました。
せっかくのチャンス、体力の回復が一番大切です。
うなだれたラッドフォードの顔の前に少量ずつユーカリを置いて新芽を食べさせます。ラッドフォードのケージを見回る度に、死んだように動かないその姿にドキっとさせられました。このままでは、せっかく得たセカンドチャンスを活かせず、明日の朝もぐったりしているのではないか?そんな、どんよりした空気が流れていました。

しかし、翌朝のラッドフォードの目には心なしか、昨日よりも生きたいという意志が感じられました。
相変わらず床でぐったりしてはいるものの、ひとりぼっちだった夜にも近くにあったユーカリを少し食べたようでした。こうして、この日もラッドフォードは命をつないだのです。
目から発せられる生命力は日に日に強くなっているように見えました。安楽死から一歩ずつ遠のいていく毎日。それでも、まったく木に登られないラッドフォードの森に帰る日までの道のりは、とてもとても長いのです。何故なら、木に登れないコアラは野生には戻れないからです。

レンジャーの補助のもと、少しだけ木に掴らせるリハビリのような事が始まりました。しかし、少しずつ食べることで体力を回復して来ていたように見えたある日、ラッドフォードはユーカリを一切食べなかったのです。皮下脂肪という蓄えが全くないコアラが食べないでいれば、一気に筋力を失います。口元に持っていっても全く興味を示しません。どうしよう…。
さらに悲しいことに、入院のストレスのせいか、軽い膀胱炎を発症してしまったのです!…

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