カオグロキノボリカンガルーたちが視力を失くしたのは、植物の葉の毒に依るものではないかという研究者の確信 2023年8月14日
ABC Far North
Amanda Cranston記
2023年4月23日
担当:R.M.
【要約】
稀少な雨林に住む哺乳動物が、アサートン高原の金物店やガソリンスタンド、学校の教室に現れるようになった。
木登りカンガルーが道に迷い、ボーッとし、しかも目が見えない状態で現れるのだ。科学者は何故なのか訳がわからず困惑している。失明に苦しんできたカンガルーは1種類だけではないようだ。その証拠としてカオグロキノボリカンガルー同様にオオカンガルーにも視力障害が発生している。獣医学専門家はその原因を調査するためにさらに多くの資金供与を望んでいる。
カオグロキノボリカンガルーは、オーストラリアにいるたった2種類のキノボリカンガルーのうちの1つで、クイーンズランドのはるか北、カードウェルとデインツリーの間に棲息している。彼らは10年もの間失明に苦しんできたことが観察されている。
カオグロキノボリカンガルーの研究で博士号を持ち、キノボリカンガルー救助保護センターをケアンズの西マランダに設立したカレン・クームズは、彼女が保護している20匹のキノボリカンガルーのうち、18匹に視覚障害があると言っている。
「彼らは失明している訳ではありません。何故なら彼らは少しだけ見えているのです。ただ彼らの眼の焦点合せ能力と深度感覚が何らかの理由で下がっているのです。」と彼女は言った。
キノボリカンガルーは、本当に信じられないような場所、つまり金物店やガソリンスタンド、学校の教室で見つかったとクームズ博士は言った。
「これは、キノボリカンガルーにとって正常な行動ではないのです。」と彼女は言った。
「彼らは道に迷い、雨林から遠く離れた場所に来てしまったのです。」
動物専門の眼科医で、動物の眼の障害を治療するトニー・リードは、クームズ博士のケアセンターで過去10年間キノボリカンガルーを診察してきた結果、カンガルーの眼そのものは問題なく、彼らの行動は他の何かによるものと結論付けた。
「彼らを診察すると、眼は正常に見えます。ということは白内障や網膜変化のような構造的な異常ではなく、中枢性失明の疑いがあるのです。」と彼は言った。
「彼らは、目くらましのような光感覚を感じているようです。視神経は光に対してまだ反応しているのですが、視野が完全ではないのです。」
リード博士によると、キノボリカンガルーは救助された時、あたかも目が見えず、困惑して、さらにボーッとした態度で、それは行動性の視覚障害を示している。
クームズ博士はサンプルをアンドリュー・ピータースに送り続けている。彼は動物病理学者で、チャールズスタート大学の野生動物健康病理学の准教授である。彼は動物たちに視覚障害があることを結論付けた。
「動物たちが中枢性失明を患っているというのが医学的判断で、私たちは、視神経に極めて僅かではあるが軽度の炎症があるのを発見しました。」と彼は述べた。
「結論は視神経と脳のダメージで、残念ながら治すことはできません。」
カンガルーにとって失明がどれだけ頻繁に起こることか
数種類のカンガルーで起こっている問題が懸念事項として挙げられたのは、これが初めてではない。
チャールズスタート大学の学生が数年前、ウオガウオガに住むオオカンガルーの失明について調査したと、ピータース博士は言った。
その学生の発見により、失明の問題は外来植物の持込みによって引き起こされていることがわかったと彼は言った。
彼は、「毒性植物がオーストラリアの野生動物の失明に関連付けられたのは、それが最初でした。」と述べたのだ。
「興味深いことに、この問題は当時の特殊な天候、つまり長引いた乾季の後の雨が、牧草地にとって替わって急速に植物をはびこらせることと関連しているのです。」
カオグロキノボリカンガルーのエサとなる葉の毒性を増加する天候も関連しているかもしれないと、クームズ博士は確信した。
「雨不足、気温上昇で雨林は疲弊していると思います。その結果葉の水分は減り、毒の濃度が上がっているのです。」と彼女は言った。
「カンガルーは水分を葉から摂っています。彼らが毒性の葉を食べると、その神経毒が免疫システムを傷つけるのです。」
ピータース博士によると、毒性の葉またはウイルスが視覚障害を引き起こしたと結論付けるのは難しい。なぜなら毒性植物による病気は、ウイルスのような他の原因によるものと似ている場合があるからだ。
「毒性植物とウイルスはどちらも、居住地の変更や天候の変化、さらには、外来種に関連しているのです。外来種は、野生では以前は存在しなかった病気を引き起こし得ます。」と彼は言った。
カンガルーの失明がウイルスによる場合も多く、その全てが蚊の媒介によるものだ。しかし蚊を媒介とするウイルスの場合、それを実証するためにはかなり多くのサンプルを検証しなくてはならないというのがピータース博士の意見だ。
カンガルーのリリースまたは移転
視覚障害の原因が何であろうと、それは遺伝しないとクームズ博士は言った。「視覚障害を持った親から生まれた子は目が見え、失明の症状は全くない。」と彼女は言った。
死んだ母カンガルーの腹袋から助けだされた子どもたちは、カンガルーの子が母親と一緒にいる期間から判断して、キノボリカンガルー救助保護センターに少なくとも2歳半までいる。その後彼らは健康な生活を送るよう雨森に帰される。
視覚障害のため森に放すことができないカンガルーは、飼育下繁殖プログラムの一貫として動物園に送られることが決まるまで、クームズ博士とボランティアがケアする
「このようなカンガルーは、大規模な収容施設で余生を過ごすのです。」彼女は言った。
「今度は、キノボリカンガルーに降りかかっている問題について、彼らが人々を教育し、しかも繁殖プログラムの一翼を担うのです。」
「人間が動物の種について知らない限り、それを守ることはできません。しかも多くのオーストラリア人がキノボリカンガルーの存在さえ知らないのです。」
【感想】
キノボリカンガルーにこの記事のような問題があるとは全く知らなかった。
視覚障害を持ったカンガルーを保護する施設があるのは心強いが、助けられるカンガルーの数には限りがあると思う。気候変動が関わっているのかもしれないが、根本の原因をさらに研究して、可能な対策の発見、実施に繋げて欲しい。