ティウィ諸島のレンジャーが固有種保護のためにネコの淘汰を行った 2023年10月25日

      2023/10/25

『Tiwi Islands rangers conduct cat cull in bid to protect native species』(英文PDF) 
ABC News
Jessica Rendall記
2023年7月4日

担当:Rin

【要約】

ティウィ諸島の人里離れた場所にあるベースキャンプで、レンジャーと研究者が地図の周囲に集まって、活動計画について話し合っていた。この戦略的な会議の議題の1つは、オーストラリアで人気のペットであると同時にメルヴィル島では敵でもあるネコについてである。

ペットから野生化したネコは、オーストラリア全土で毎晩およそ7500万匹の動物を殺しており、少なくとも30種ほどのオーストラリア固有の哺乳動物の絶滅に関与した。貴重な固有種の生息地であり世界で唯一無二の場所であるティウィ諸島の北部における野生化したネコのコントロールを行う取組は、とりわけ急を要するものである。

チャールズ・ダーウィン大学の博士候補者であるジョージア・ニーブは、最も効果的なネコの淘汰方法を模索するために、オーストラリア中の研究者と協力している。“オーストラリア本土の北端に比べて、ティウィ諸島は本土での生息数が減少しているたくさんの哺乳類、わずかではあるが鳥類および爬虫類の避難所となっており、ティウィ諸島ではこれらの動物が未だに比較的多く生息している.”とニーブ氏は話す。“最近はティウィ諸島での哺乳類の絶滅は起こっていない.”“メルヴィル島でネコの淘汰を行わなかったとき、長期的に見た結果は、哺乳類の絶滅が発生した本土の一部のようなものになっていたと考えられる。”

研究者とレンジャーは、メルヴィル島で地域の野生化したネコの生息数管理を行うキャットウィークという新たな試みを開始した。キャットウィークは試行錯誤の繰り返しであり、ネコを最も惹きつける餌を探すために様々な餌を試した。“私たちはいくつかの島の評議会メンバーやレンジャーに”キャットウィークを行って、何が効果的で何が効果的でないのかを調べるために様々なツールを試してみませんか?“と話を持ちかけました.”とニーブ氏は話す。

野生化したネコに対抗するために使用されたのは尿とAI

ティウィ諸島のレンジャーとオーストラリア先住民であるデレク・プルンタタメリは、島における野生化したネコの管理を行ってきたが、これが難しい仕事であると話した。“ジョージと一緒に働いて、私たちは鶏肉を使ってみたり、自分たちで釣った魚を使ってみたり、ツナ缶を使ったり餌を様々に変えてみた.”とプルンタタメリ氏は話す。

しかしながら最も上手くいった方法は、全く餌の問題ではなかった。動物生態学者であり野生化したネコの淘汰の専門家であるパット・ホジェンスは、ティウィ諸島における動物の繁栄はネコが食に困らないことを意味すると話す。“ネコは生きている動物の捕食を好むため、2m歩いて樹上のサバンナグライダーを捕まえることができれば、ケージトラップにバッファロー肉のかけらがあってもケージに入る必要は無い.”とホジェンス氏は言う。

研究チームは、ケージトラップにおいてネコを最も効果的に惹きつけたものの1つとしてネコの尿を発見した。

“ネコは縄張り意識が強いため、ネコはほかのネコの尿や糞の臭いがした時、よりケージトラップに入ってくる、なぜなら、ネコたちは『自分の縄張りに踏み込んだのは誰か、中に入って誰だか見てみよう』と考えるからです “とニーブ氏は言う。また、チームは人工知能技術を利用し、ネコを感知して毒を吹き付け、他の動物には危害が及ばないよう機械を配置した。Felix Grooming Trapはオーストラリアの他の島でもネコの飼育数管理のために使用されており、これがティウィ諸島でも効果を発揮すると期待される。

ネコは野生固有種に多大な影響を与える

ティウィ諸島における野生化したネコの行動に関する研究は限られている。ニーブ氏は、キャットウィークの主な試みの大部分は、捕獲したネコに衛星追跡のための首輪をつけてタグ付けをした後に放すことで、レンジャーが島中で彼らの行動を研究し、生息数管理というミッションをより的確なものにすると話す。

“オーストラリア北西部のキンバリー地域では野生化したネコについての追跡を行っているが、ティウィ諸島では何も終わっていない。”とニーブ氏は言う。“敵を管理するためにはその敵を知る必要があり、そして、そのため、キャットウィークの別の目的はネコを生きたまま人道的な方法で捕獲し、衛星追跡のための首輪をつけて、彼らの島における生息域や彼らが好む生息環境の特徴に関するデータを得ることだった”

キャットウィークの間に捕獲されたネコの一部には安楽死処置と解剖が行われ、彼らが捕獲した獲物の調査が行われた。“3kgの雌ネコの腹部を調べたとき、とてもきれいなオーストラリア固有の哺乳動物で北部の熱帯地域に見られる不思議な動物であるサバンナグライダーを捕食していたことがわかった。”とホジェンス氏が話した。“これにはとても驚いた。サバンナグライダーなどの動物は多くが樹上生活性で、野生化したネコが樹上の動物を捕まえる方法を学んだことが明らかである.”

このネコはさらに9匹のヤモリと1匹のトカゲと昆虫を捕食しており、これらは捕食後わずか2時間のものであった。“このネコは日が沈んでから起きて狩りを始め、午後9時半までのわずかな時間で大きな影響を及ぼした”とホジェンス氏は言う。

“すべてのネコは一匹残らず絶対に何かしらの影響を与える.”

ティウィ諸島のレンジャーであるニキタ・プルンタタメリは、この島への外来種と上手くやっていくのにたくさんのレンジャー達の時間を費やしたと言う。彼女は、さらなる寄付がキャットウィークのような計画に分配され、学んだ方法が地元や若い世代のレンジャー達に浸透することを望んでいる。

“願わくば野生化したネコのすべてを管理下に置き、さらなる支援が得られれば良い.”と彼女は話す。“彼らの生息地に出向くことで、ティウィ諸島の一般市民が私たちの活動に興味を持ってくれれば、このニュースを広める一助になるだろう。”

【感想】

日本では、ペットの野生化やそれによる自然環境への悪影響が話題になることが少ないので、野生動物保護の目的で野生化したネコの淘汰を行う活動はとても興味深いと感じた。警戒心の強いネコを捕獲することはとても難しいと思うが、人工知能を駆使することで他の動物には危害を与えないような試みを行っていることを知り、科学技術の発展が野生動物保護の観点でも有用であると感じた。オーストラリアではもちろんだが日本でもこの記事を読んで、野生化したペットが自然環境に悪影響を及ぼすことがあるため終生飼育の重要性が広く知られると良いと感じた。

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