タスマニアンデビルによって野良猫の数が抑制され、代わりにバンディクートが守られていることが研究により示されている 2020/08/18

   

『Tasmanian devils keep feral cats at bay, in turn saving bandicoots, study shows』(英文PDF)

ABC Radio Hobart 2020年03月04日

担当者: S.K.

≪要約≫

Georgie Burgess記

タスマニアンデビルの不吉なうなり声は,約3,000年前にオーストラリア本土では聞かれなくなった.最近では,この生き物が象徴的な存在となっている島でも83%が病気に侵されおり,その結果鳴き声が消えていっている.

タスマニア大学の研究者Calum Cunningham氏は,有袋類の数が減少したことが生態系に与える影響について研究してきた.「我々は,タスマニアンデビルが著しく減少した地域では,生息数が維持されている地域に比べ,野良猫が58%も多く生息していることを発見しました.」と彼は述べた.

タスマニアンデビルの生物的防除が,バンディクートのような野良猫の獲物となる小動物にも恩恵を与えることがわかった.

Cunningham氏は,「タスマニアンデビルが保全ツールとして利用でき,場合によっては本土に再生息させることができると信じている. 我々は,そのことが本土でも生態学的な利点を与えうるか否かを判断することができます.」と述べた.

タスマニアンデビルは野良猫の数を減らし,代わりに野良猫の獲物となる動物に利益をもたらすだろう.

 

バンディクートの友達

Ecology Letters誌に発表されたこの研究は,タスマニアンデビルの個体数が程度の差こそあれ減少しているタスマニアの地域をモニターした研究である.

Cunningham氏は次のように述べた.「我々は熱帯雨林,乾燥地,沿岸部など,生息地のタイプを一致させるように注意を払って調査しました.」「また,野良猫を監視するためにカメラトラップを設置し,個々の猫を識別するためにマーキングを使用しました.そして,特定の場所における野良猫の生息数を推定する統計モデルを処理することができました.」

その統計モデルにより,タスマニアンデビルが存在する場所では,野良猫の数が著しく減少していることが示された.「我々は,野良猫がほとんどいない場所でのみ,バンディクートが繁栄していることを発見しました.」とCunningham氏は述べ,「タスマニアンデビルはほとんどの場合,すでに亡くなっている,あるいは年老いたり病気を患っているワラビーやパディメロンのような、バンディクートよりも大きな動物を食べていました.」と付け加えた.

 

タスマニアンデビル対キツネ

3,200年前の化石の記録から姿を消すまで,タスマニアンデビルはオーストラリア本土全域に生息していた.絶滅には,ディンゴの導入,気候の変化,人間の人口増加と発展が関係していると言われている.

Cunningham氏は,タスマニアンデビルを本土に再生息させるためには管理された実験から始めなければならないとし,次のように述べている.「生態学者は誰一人として,タスマニアンデビルを本土へ無制限に導入することは提案しないでしょう.「まずは,フェンスで囲まれた場所で慎重に管理しなければならない.」

タスマニアにキツネがいないということは,タスマニアンデビルが本土の天敵とどのように相互作用するかは不明であるということを意味している.

「我々は彼らが競争すると予想していますし、タスマニアンデビルはキツネに何らかの悪影響を与えると思います.」とCunningham氏は語った.私たちは好きなだけ仮説を立てることができますが、実験をしなければわかりません.

タスマニアにはキツネが生息しているという証拠はあるが、未だかつて個体群で存在していたことはない.

「人々は、タスマニアンデビルの存在が,キツネが定着しなかった理由の一つではないかと仮説を立てています.」とCunningham氏は述べた.

研究によると,タスマニアンデビルはポッサムやワラビーの数も減少させた.

「特に農家はそれに対して問題を抱えており,これもタスマニアンデビルが生態系に与えうる1つの影響なのかもしれません.しかし,地域社会もそれを望んでいなければならない.」

頂点捕食者の研究は,マリア島においてタスマニアンデビルがいなくなることがポッサムやウォンバットに与える影響について明らかにした.頂点捕食者がいない場合,ポッサムは食料を求めてより多くの時間を地上で過ごすようになった.

タスマニアンデビルを野生に放した場合,ポッサムは木に戻り,ウォンバットは夜間にタスマニアンデビルに遭遇することを避けるために昼間の活動量が増加した。

<感想>

タスマニアンデビルを脅かす病気はデビル顔面腫瘍性疾患であり,悪性腫瘍が口の中や周囲にできる病気です.この腫瘍のせいで食べ物を食べることができなくなり,3-6ヶ月ほどで死に至るといわれています.このような病に苦しむタスマニアンデビルがいることにとても心が痛みますが,それと同時にタスマニアンデビルの数が減少することによって生態系に影響が及んでいるのだと思うと,なおさら恐ろしい病だと感じます.この病気に対するワクチンが現在存在しているようなので,自然界に存在するタスマニアンデビルすべてに投与することは不可能であったとしても,より多くのデビルが救われてほしいと思います.

 また,本記事にはタスマニアンデビルを本土へ戻すということが書かれていますが,なかなか大変な取り組みだと感じました.タスマニアンデビルを本土に戻すことが生態系に与える影響を評価するためには,様々な観点から考える必要があると思うので….ですが,研究により,タスマニアンデビルが現在の生態系に負の影響を与える可能性が低い,もしくはそれによってよりよい生態系が構築される可能性があるということが示され,本土でもタスマニアンデビルがみられる日が来ることを期待しています.

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