これを掘れ:小さなハリモグラは1年にトレーラー8台の積荷相当の土を掘り進み、気候変動への取組みを助けている 2021年7月6日

      2021/07/06

『Dig this: a tiny echidna moves 8 trailer-loads of soil a year,helping tackle climate change』(英文PDF)

記載元:The Conversation-Academic rigour, journalistic flair (https://theconversation.com/au)                David John Eldridge(Professor of Dryland Ecology, UNSW)記

担当:RM

≪要約≫

ヨーロッパ式農法が始まって200年、オーストラリアの土壌はひどい状態である。つまり栄養素や炭素を含む有機物に枯渇しているのだ。これは土壌の健康状態にも世界的な温暖化に取り組むための努力にとっても悪いニュースである。

オーストラリア固有種であるハリモグラがその問題解決の一旦を担うかもしれない。ハリモグラはアリを探しながら土を掘って穴や溝、くぼみを作る。私たちの調査は、この土木技術が環境に利益をもたらし得るという素晴らしい評価を明らかにした。

ハリモグラは、土を掘ることにより直物の葉や種を土中に閉じ込める。この作業は土壌健康を改善し、植物の成長を促進し、大気中よりも土中に炭素を保つ。この工程の重要性を侮ってはいけない。ハリモグラの生息地を改善することにより、土壌健康を大幅に改善し、気候変動への取組みを促進することができるのだ。関係者から詳しい情報を得てみよう。

野生の掘削機

多くの動物が、広範囲に渡り土を掘ることにより、土壌の健康状態を改善する。これらの「生態系エンジニア」は土だけでなく、植物やその他の生物にも利益をもたらすというサービスを提供する。オーストラリアでは、土を掘る固有種の殆どが絶滅したり、絶滅危急種や絶滅危惧種になっている。しかしハリモグラは例外である。大陸の広範囲に渡って存在する殆どの生息地で比較的よく見られるのだ。ハリモグラは多産系の掘削動物なのだ。

ニューサウスウェールズの南西にあるオーストラリア野生動物保護区スコティアサンクチュアリーで行った私たちの長期観察から、1匹のハリモグラは毎年約7トン、つまりトレーラー8台の積荷相当の土を動かすと思われる。ハリモグラが作った土のくぼみは、幅50センチ、深さ15センチにまで達し得る。かなり劣化した土でアリが少ない場合、ハリモグラはシロアリを探してより深く掘り、さらに大きな穴を作ることもある。この地中を動く能力は、無意識にも、種子と水の仲介というもう1つの非常に重要な機能を提供する。

キューピッドとしての役割

種子が発芽するためには、水と土中の栄養素が共に作用しなくてはならない。私たちの実験により、ハリモグラの掘削活動がその作用を可能にすることがわかった。

私たちは、雨が降った後、種子がハリモグラの穴に閉じ込められるかを実験した。私たちは様々な種子に異なる色の染料で印を付け、ニューサウスウェールズ、コーバー近くの半乾燥林にハリモグラが作るものと同様の穴を掘り、その土表面に種子を置いた。さらにそこに実験的に雨を降らせた殆どの種子が穴に流れ落ち、そこに留まった。この実験により、ハリモグラの穴がどのように種子と水と栄養素を出合せ、オーストラリアの貧しい土の中で種子が発芽し生存するためのより良い機会を与えていることがわかった。修復中の穴はその後植物と土の「ホットスポット」となる。そこから植物がその地域全体に広がることができるのだ。

穴はまた珍しい微生物共同体や土壌無脊椎動物の避難場所になっていることも、私たちの調査でわかった。これらはおそらく、有機物を分解して土壌炭素を作るという重要な役割を担っている。土を元に戻すための人間の多大な労力は、ハリモグラのような動物によって構築された自然構造を模倣すればよいことは疑う余地もない。

炭素を作りだす農夫としてのハリモグラ

 

ハリモグラの掘削活動が、枯渇した土中の炭素濃度をいかに高めているかということも、私たちの最近の調査が示している。有機物が土表面に存在すると、それは、炭素と窒素を大気中に発散させる強い紫外線によって分解される。しかしハリモグラがエサを探し回ると有機物は土中に埋められてしまう。有機物はそこで微生物に触れる。その微生物は有機物を分解し、炭素と窒素を土中に放つのだ。この作用はすぐに起こるものではない。私たちの調査からは、穴の中の炭素レベルがむき出しの土に含まれるレベルを上回るまでには16-18ヶ月かかると推測される。このハリモグラの掘削、捕獲、建設という全行程は、ごみ、炭素、栄養素、植物のホットスポットのパッチワークを作る。これらの部分的な肥沃な土地が健康で機能的な生態系を推進する。そしてより暑くより乾燥してきている世界にとってより重要になるであろう。

ハリモグラの力を役立てる

土壌の復元は、大陸の広範囲に渡るので、お金がかかりまた実用的ではない。ハリモグラによる土のかき混ぜは、費用効果の高い復元方法であり、その可能性は実用効果も高い。オーストラリアのハリモグラの生存数は現在危険な状態ではない。しかし将来もハリモグラの健全な生存数を保つためには、生息地域の管理が必要とされる。ハリモグラはよく木の洞に隠れる。従って倒木を排除することは、彼らの棲家や餌場をなくすことにつながる。彼らの棲家を守るためには、薪となる木の排除といった作業の禁止が必要である。ハリモグラはその動きが遅いため、頻繁に交通事故で死ぬことがある。この問題の解決のためには、野生の灌木の茂みと茂みの間に低木や地上植物を植えて植物回廊を作るべきである。そうすればハリモグラはある場所から次の場所へ安全に移動できる。さらにハリモグラの鋭いトゲはオーストラリア固有の捕食動物から身を守ることはできるが、キツネや猫のように後から連れてこられた捕食動物にはあまり効果がない。従ってこれらの脅威から守る政策も必要となる。

オーストラリアの壊れやすい環境の健全度は、大幅に低下している。ハリモグラはすでに価値のある生態系の回復作業を提供している。従って彼らは守られ、その活動が確実に持続するよう育成されなくてはならない。

<感想>

「恐るべしハリモグラ」この記事を読んでまず思った。小さな体で人間が簡単にできない土壌の回復という大きなことをやってのける。もちろんハリモグラはただ自分の生活を淡々と繰り返して行っているだけ。でもそれが複雑で長期にわたる化学反応を起こし、環境に多大な利益をもたらすとは、驚きとともに感動した。そしてそれを発見した研究チームも素晴らしいと思った。ハリモグラの生存環境がこれからも守られることを祈る。

私がよく行く公園には、モグラが掘り起こした土の山が多く見られるが、日本のモグラの活動も同様の効果をもたらしているのだろうか。それを研究している人たちはいるのであろうか。調べてみたい。

 

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