フレーザー島に生息するディンゴの1日の生活 2022年2月15日

      2022/02/22

『A day in the life of Fraser Island Dingo』(英文PDF)

Australian Geographics

2021年8月20日 Australian Geographics

Angela Heathcote記

 担当:S.K.

【要約】

世界で初めて,科学者らがクガリ(先住民の言葉でフレーザー島のこと)のウォンガリ(先住民の言葉でディンゴのこと)の1日を撮影することに成功した。

それはカメラとGPSを取り付けた首輪で撮影され,ウォンガリが砂原を数百キロメートルにわたって駆け抜ける姿や魚を食べる姿,仲間に寄り添う姿を見ることができ,これまでにない映像となっている(画像引用元:クイーンズランド州環境科学局).彼らの生活の最高のスナップショットを作るために,カメラで15分ごとに30秒の動画が撮影された。

 

クイーンズランド公園および野生動物レンジャーの責任者であるリンダ・ベレンドルフさんは次のように述べている。

「我々はいつも外からディンゴの様子を観察しますが、ディンゴの側から外の様子を見るという概念はとても興味深いものです」

「我々は,彼らがどこへ行き何をしているのか,そして立ち入れない場所にしばしば行く様子を観察しています」

 

リンダさんは,特に彼らと人間の交流について興味をもっている.ある映像では,ディンゴがベランダから彼を撮影している人々を座って見ている様子が写っていた.「彼らは正しいことをしているのです」とリンダさんは述べた。「彼らは食べ物や口笛で誘ったり刺激したりせず,距離を置いているのです」

 

それから,これが可愛い様子。「彼が仲間の隣で寝ていると,彼女は寝返りをうつ時に足で彼を蹴って起こそうとするんです.この映像が私は好きで,みんな共感すると思います」

 

別の映像では,彼が雄大な遠吠えをしているのを聞いたり,寝床にゆっくりと出たり入ったりする様子を見ることができる.次の映像は彼と一緒に走っているかのような映像で,彼の可愛くて小さな舌がカメラにこそこそ入ったり出たりする様子を見ることができる。

映像はとても面白いが,使用した首輪は,2019年にクイーンズランド州環境科学省が3つの懸念事項を受けて新たに策定した管理対象の重要なひとつだ。

 

カメラは5月に初めて設置され,非常に懸念される住宅地であるオーキッドビーチ周辺のディンゴに装着された。

首輪がディンゴへ何らかの害を与えることは確認されておらず,内部には一定期間が経過すると作動して首輪が脱落するように設計された装置が組み込まれている。

 

科学者らは,ディンゴがその地域の食料に頼って生きているのか,またどのような食料を確保しているのかについてより理解が深まることを期待している。

 

「ディンゴのことだけでなく,もしディンゴが特定の場所,特定の家に現れるとしたらどうでしょう」とリンダさんは述べる。

「れらの地域にディンゴをおびき寄せている原因であるディンゴに餌付けをしている住民を捕まえました。このカメラがあれば、住民が(餌付けをしないという)ルールを守ることを助け、そのことがディンゴの保護に繋がるでしょう」

 

リンダさんはディンゴが島で何を食べているかについて,5年間研究を行ってきた.住民や観光客による餌づけは,ディンゴが十分な食料を確保できていないという根拠の薄い社会通念に基づいていると,リンダさんは考えている。

 

「カメラの情報により,ディンゴが豊富な食料を確保可能であることが示されることを私たちは期待しています.彼らは,他の地域のディンゴよりも多くの食料を得ています.つい先日も,体長11.5 mの大人のザトウクジラが打ち上げられていました」

「人々は,それでも彼らにはえさ場が必要で,私たちは彼らを守る必要があるというでしょう.彼らは,カメやクジラ,ジュゴン,バンディクート,ワラビー,カンガルーなど,非常に多くの食料を得ています.彼らが住宅街に立ち入る必要はなく,彼らは自らを危険に晒しているのです」

 

リンダさんによるとディンゴの映像と位置情報を融合さることで、初期におけるディンゴとの干渉や危険な遭遇をさけることができるであろう。

一般にディンゴが人に噛みつく場合,その前からとる行動があります…例えばバッグを盗んだりするところから,キャンプ場をうろついて支配力を試すようになり,そしてそれを侵すと噛みつくようになります」

 

カメラは新たに追加されたものですが,GPS追跡用首輪は管理ツールとしてすでに使用していました。問題を起こすディンゴの場合,我々はGPSを用いて彼女の居場所を管理し,キャンプ場を閉鎖することもありました。

 

「私たちは彼らを殺処分したくはありません.他の方法でその状況に対応したいのです」

「今後は,技術とともにディンゴの安全注意喚起が必要です。この動物を悪者にするのではなく,人々が彼らの頂点捕食者としての能力を理解することが重要なのです」

 

ABCの取材に対し,ブッチュラ・アボリジニ・コーポレーション会長のゲイド・ジュールド氏は,伝統的な所有者(先住民のこと)が提供する安全情報に対して島への訪問者がより反応を示すようになったことを強調した。

「多くの人々が,ブッチュラの人々から提供される情報により反応し,引き受けてくれるようになるでしょう.政府や非営利団体など島の他の権力者とは違って」とゲイドさんは述べる.

 

誤解されがちな動物たちの生態をのぞき見ることで,島での彼らの存在価値が浮き彫りになる.

「ディンゴほど部族を二分する動物は見たことがありません」とリンダさんは言う.「とはいえ,彼らの頂点捕食者としての役割だけでなく,先住民や彼らの神話学,伝統とのつながりから,彼らは生態学的にも文化的にも重要な存在です.彼らはそこに属し,そして私たちの仕事は彼らを守りながら,人々の安全も守ることです」

 

<感想>

以前にもフレーザー島のディンゴに関する記事がありました.そこでは,ディンゴに関する正しい知識を有していない人々がディンゴとの距離感を誤り,その結果被害に遭うケースがあると記されていました.本記事で紹介されているようにディンゴの生活環を撮影することは,人々がディンゴを正しく理解し,人々とディンゴが共生していくために重要なことだと思います.人間側が危険に晒されないためにも,そして動物側の生態系を破壊したり,本来殺されるはずのなかった動物を捕殺する事態を招くことのないようにするためにも,映像が大いに役立てられてほしいと思います.

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