気候変動により食料資源が枯渇したことでザトウクジラが疲弊している 2015/11/6
2016/05/13
ABC NEWS13 Jun 2015
『Humpback whales exhausted as food sources depleted due to climate change, researcher says』
「気候変動により食料資源が枯渇したことでザトウクジラが疲弊している。」と研究者は言う。(英文PDF)
担当者:Atsushi.T
《要約》
クジラの研究者によれば、「気候変動によって、ザトウクジラは毎年温暖な水域へと移動する間に疲弊している。」
ジャニール・ブライトウェイトさんは歴史的な捕鯨の情報を集め、クジラが西オーストラリア北海岸沖の繁殖海域まで移動するために必要なエネルギー源となる南極の食料資源が気候変動によって激減している恐れがある、と発表した。
「クジラが食糧を得るその地域の氷が減れば、オキアミは減少し、クジラが得られる食料が減少する。」とブライトウェイトさんは語る。
「クジラは飽食と断食というライフスタイルで生きている。
夏の間ずっと彼らは南国の海でオキアミをお腹一杯に食べ続けるが、一度その海域を離れ移動期間に入ると、非常に厳しい断食を続ける。
例えるなら、それは車のようである。
もしガソリンスタンドに十分な量のガソリンが無ければ、あなたはタンクの4分の3ほどのガソリンで出発しなければならず、その旅は上手くいかないだろう。
これらのクジラが南国の海に戻ってくる前にガソリンが尽きてしまったら、誰かが助けてくれるわけでもないので、疲弊により死んでしまうだろう。」
鉱山業や航行、漁業もまたクジラに影響を及ぼしている。
この研究は西オーストラリア大学でのブライトウェイトさんの博士課程の一部として行なわれた。
彼女は他の要因もまたクジラの移動をより困難にしているという。
「鉱山業や航行、漁業さえもクジラの生息環境をより厳しくしている可能性があり、結果として余計なエネルギーを消費させる」と彼女は言う。
「仮に鉱山業がこれらの地域で航行の増加を招いているのだとすれば、クジラたちは休憩する代わりに余計な体力を消費しその海域を迂回するだろう。」
ブライトウェイトさんによれば、この問題はクジラの個体数の減少を引き起こしており、メスのザトウクジラは特に影響を受けやすいようだ。
彼女は次のようにも語る。
「メスのザトウクジラは子供も養わなければならない。」
「メスはもっと素早く泳いでいる上に、子供もまたより多くのエネルギーを燃焼しているため、メスはより多く授乳しなければならない。そのため、メスは自分が蓄積しているエネルギーを普段以上に消費する必要がある。
彼女たちが、自身の貯蓄したエネルギーをより多く消費しているのだとしたら、3年ないし4年に一度、一子持つのが精一杯になるかもしれない」
ブライトウェイトさんの研究はUWA(西オーストラリア大学)の海洋学会により委託されたものである。
【所感】
クジラを苦しめる人間活動として、日本人が第一に考えるのは捕鯨であろう。捕鯨に関しては様々な立場、価値観から多くの意見があるが、国際的には反対の声が目立つように感じる。この調査結果がより深刻なものであるとすれば、今まで反捕鯨を訴えてきた国もまた自国の海洋における産業を見直す必要が生じるかもしれない。この調査がさらに進展することで、捕鯨を含めクジラへの人的悪影響を及ぼす原因について、新たな知見からより進んだ議論、対応が講じられることを期待する。また同時に、調査捕鯨と謳って捕鯨を続ける日本にいながら、このような調査結果を反捕鯨国の研究、記事から初めて知ることは残念であり、疑念を隠せない。調査捕鯨によって確かな成果を得ているのであれば、国民並びに諸外国に分かりやすく、納得できる研究結果を提示するのが捕鯨推進国としての責任ではないだろうか。