コアラの精子は、絶滅から種を救う保険になるかもしれない 2022年9月20日

   

『Koala sperm could be the insurance policy that saves the species from extinction』(英文PDF)

ABC Newcastle

2022年04月13日

Ben Millington記

 担当:S.K.

【要約】

ニューキャッスル大学の新しい研究によると、コアラの精子のバイオバンクによって将来的にコアラの絶滅を防ぐとともに、繁殖プログラムをより安く、より成功させることができる可能性があるという.

 

コアラは今年、オーストラリアの東海岸の大部分で絶滅危惧種に指定され、2050年までに絶滅すると予測されている.コアラの繁殖補助に関する研究は行われているが一方で、コアラの繁殖材料(精子)の大規模な収集と保管の開発に向けた特定の投資はこれまで行われてこなかった.自然保護科学者のライアン・ウィット氏は次のように述べている.「今のところ,2019-20年に起こった山火事のように、一度に数多くの動物が亡くなる恐れがある自然災害に対する保険がない」

 

「もし、コアラがこのような火災事故で絶滅してしまったら、彼らを復活させたり、遺伝子を保存したりする方法はありません.」

 

Witt博士が共著となっているこの研究は、本日、国際学術誌Animalsに掲載された.生殖補助技術は、人間の不妊治療や農業用動物の繁殖のために何十年も使われてきたが、野生動物の保護への利用は遅れている.Witt博士は、彼らのモデリングにより、コアラの繁殖プログラムにおける人工授精のような技術費用は5-12倍削減可能であることが実証されたと述べている.

 

さらに,Witt博士は次のように述べている.「飼育下繁殖プログラムでは近親交配を防ぐためにコアラのコロニーサイズを大きくする必要がありますが、生殖補助も利用することで、飼育下に置く必要のあるコアラの数を減らし、コストを下げ、かつ遺伝的多様性を改善することが可能です.」「そうすれば、貴重な保護資金をより多くの種をサポートするために利用したり、生息地の復元などコアラの他の保護活動をサポートすることができます.」

 

科学者たちは、コアラの繁殖に冷蔵保存精子を使うことに成功しているが、凍結精子を使う技術やテクノロジーの開発に関する知識のギャップがまだ残っている.筆頭著者のラクラン・ハウエル氏は、今コアラの精子採取を中止するべきでないと言う.「我々は生殖補助材料(精子)のバンクダウンにできるだけ早く着手することで、研究への投資やツールの開発の時間を確保することができます.」

 

「時間が重要だ.」

 

ポート・スティーブンス・コアラ病院院長のロン・ランド氏は、ニューカッスル大学およびタロンガ保護協会と共同で、2ヶ月前に州政府へバイオバンキングの詳細な提案書を提出したが、返答は得られていないと述べている.「資金さえあれば、すぐにでもこのプロジェクトを始めることができる.」,「2050 年までに NSW 州のコアラの数を 2 倍にしたいと政府は発言しているが、資金調達に関しては沈黙を守っていることに私たちは困惑している.この繁殖技術が実証され、導入されない限り、30年後にコアラの数を2倍にするチャンスはないでしょう.」

 

<コメント>

 異常気象や森林開発などの影響によって,絶滅の危機にある動物種は増加の一途をたどっていると言われています.コアラもその内の1種です.このような厳しい状況に対して,日本の大学や動物園などの施設でも,動物の生殖細胞の保管および利用によって種を保護しようとする動きはあるようです.生殖細胞を保管して繁殖に利用するということは,この記事にも記載されていたように,火災などの突然の事態にも対応できるので,夢の技術だと思います.一方で,動物種によって精子の採取方法や凍結方法を変える必要があり,技術を確立していくことためにはまだまだ時間と労力と費用が必要なのだろうなとも思います.動物が絶滅しない努力をし続けるとともに,このような技術の発展に対する支援が必要だと感じました.

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