山火事の間タロンガ動物園に避難していたカモノハシがタイドビンビーラ野生保護区で野生に戻された 2021年1月5日
2021/01/05
ABC News 2020年5月4日
Tegan Osborne記
担当:R.M
《要約》
昨年夏の焼け付くような山火事シーズンの間、緊急避難センターにいた3匹のカモノハシが、ACT(オーストラリア首都特別地域)にある生息地に戻された。カモノハシたちは、山火事が迫り、彼らの水が豊富な棲家が、深刻な干ばつの間になくなりそうになったので、12月にキャンベラ近くのタイドビンビーラ野生保護区からシドニーのタロンガ動物園に移された。
タロンガ動物園のフィービー・ミーガー博士によると、研究者たちは、山火事がわずか2,3日でカモノハシの生息地に到達するとの予測を知って、急いで移動させなくてはならなかった。「ニューサウスウェールズ大学の助けを借りて、私たちはカモノハシの巣と小さな子たちを取り出し、、、そして乾きかけている小川からなんとか7匹のカモノハシを助けることができました。」と彼女は言った。
1日に14匹のザリガニ
クリスマス直後から、タロンガ動物園のスタッフが、カモノハシたちの世話をしてきた。彼らを健康に保つために、また彼らの自然な行動を保つために、スタッフは、カモノハシたちとの接触をできる限り少なくした。カモノハシの活発な採餌のために、生餌が与えられた。またタロンガ動物園にもともといた動物たちとは離しておかれたとミーガー博士は述べた。「彼らのうち数匹は、ほぼ2倍の体重になりました。彼らは1日に14匹のザリガニを食べていたのです。」とミーガー博士は言った。「カモノハシの世話係が素晴らしい仕事をしてくれたおかげで、カモノハシたちは丈夫に育っているのです。」
最近ACTに雨が降ったので、タイドビンビーラ野生保護区は今カモノハシたちを戻しても安全と思われる。「大量の雨で小川は満たされ、しかもエサも豊富です。」とミーガー博士は言った。カモノハシの第2グループが来週タイドビンビーラ野生保護区に戻されるだろうと彼女は言った。これは関係者全員にとって幸せな結末ではあったけれど、気候変動のために、より多くの動物たちがその生息地をなくしているので、このような避難は定期的に起こり得ると科学者は述べている。カモノハシの第1グループが放される前、彼らには音響追跡装置が取り付けられた。それにより研究者たちはカモノハシについてより多くを知ることができる。
ニューサウスウェールズ大学生態科学センターのリチャード・キングスフォード教授は、カモノハシは、野生での追跡調査が非常に難しいので、その生態は殆ど知られていないと述べた。「カモノハシの身体に取り付けられるような追跡装置がないのです。- それで私たちはこのような発信機を開発してきたのです。これらは魚に頻繁に使われています。」と彼は言った。タグは動物の腹腔内に取り付けられ、しかもそれぞれが個別のサインを持つ。受信機もまたカモノハシの生息地全体に設置される。「そうすればカモノハシが川や池の周辺で泳いで上がったり下がったりする時、つまり受信機のそばを通り過ぎる度に金属音を出すのです。」とキングスフォード教授は言った。「わずか1日で、私たちは、彼らのうちの3匹が非常に良い状態であることを、認識できました。」「私たちが設置したいくつもの受信機に反応があったのです。」
野生動物の避難はさらに日常的になり得る。
ニューサウスウェールズ大学の研究者たちは、カモノハシの状況を観察するために、タイドビンビーラ野生保護区のスタッフと密接に働き続けるであろう。しかしキングスフォード教授は、将来同様の避難措置が求められるかもしれないと警告した。なぜなら気候変動が、カモノハシの生息地に影響を与え続けるであろうから。― そしてタイドビンビーラ野生保護区の動物たちから集めた情報は、将来の救助指針の役に立つであろう。
「私たちは川が乾いてきているという報告を以前より多く受けている。たとえば、前回ニューサウスウェールズの北西で発生した干ばつは、実際にいくつかの河川に影響を及ぼしました。」と教授は言った。「そのような事態になったら、カモノハシたちは行き場所がなくなります。彼らはキツネや豚、猫や猛禽類のような捕食者に、非常に攻撃されやすいのです。」
カモノハシは水なしで長く生存することはできないと、キングスフォード教授は言った。彼は続けた。「干ばつはさらにひどくなるであろうと予測されます。」「従って、川をより良く管理することは、確かに重要な提案です。」タイドビンビーラ野生保護区は、COVID-19への公衆安全対策としてまたACTの政府が、山火事と洪水による被害の修復を行うために、継続して閉園されています。
<感想>
オーストラリアの大火災では、焼け出されたコアラの被害状況やその救出状況をニュースで見て、こちらも辛い思いをしていたが、コアラに限らず多くの野生動物がその被害に会っていることをさらに認識した。また火災に至らなくても、その原因となる異常な乾燥によって起こる干ばつがすでに野生動物にとっては死活問題であることも、今更ながら、問題の深刻さを再認識した。
気候変動は世界中で起こり、世界中の野生動物が危機に直面している。実際に被害に会った動物たちの救出と合わせて、記事に書かれているように、河川の管理を始めとした環境保護にも大きな力を注ぐ必要があると思う。このような分野でもっと科学の力が使えないものだろうか。また、COVID-19が野生動物保護に負の影響を与えないことを祈る。