ボランティアの心に残ったクジラの救出劇(タスマニア州西海岸)2021年7月20日

      2021/07/20

『Whale rescue on Tasmania's West Coast leaves lasting mark on volunteers 』(英文PDF)

ABC News 2020年9月28日

Laura Beavis記

 担当:Julie

 

トレバー・ノートン氏は、20メートルもあるヨット”ストームブレイカー”に観光客を乗せ、タスマニア州の西海岸にあるマッコーリー湾に流れ込む川を案内することに多くの時間捧げている。

しかし、ストラハン(マッコーリー湾に面する街)の地元住民は先週、ノートン氏が座礁してしまったゴンドウクジラの救助ボランティアを行なっている姿を見つけた。ノートン氏はクジラを海へ戻す前に保定して冷やしていた。

この経験は、漁師の息子であるノートン氏の「海棲哺乳類は魚と変わらない」という考え方を変えるきっかけとなった。

“クジラ達はとても大きいうえにとても賢い。そんな動物と海で人間としてすぐ側で意思疎通ができたことはとても素晴らしい出来事だった”と、ノートン氏は言う。

“自分たちが(このクジラ達の様に)海の中にいて他の動物が(同じ様に)自分たちを生かしてくれていると想像したら、自分たちはどの様に思うだろう、と考えた”

 

先週の月曜日、470頭のゴンドウクジラがマッコーリー湾に座礁し、ほとんどは助からなかったが109頭を救うことができた。

当局は日が暮れる前に全てのクジラの亡き骸を湾の外へ引っ張り出すことを目指している。

レスキュー部隊は先週末に死骸の撤去に切り替え、Tasmania Parks and Wildlife Service(タスマニア公園・野生動物管理局)のスタッフがCSIRO(Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization : オーストラリア連邦科学産業研究機構)と養殖の会社と連携して最適な撤去の方法を検討した。

トレバーとその仲間は金曜日に3頭のクジラを助けるためのチームの一員となり、3頭とも助けることができた。

クジラ達は私たちが助けていることを知っているかの様だった

マッコーリー湾への入り口はHells Gates(地獄の入り口)と呼ばれ、それに沿った海岸はとても危険だ。そこでは大きな波が生じクジラをひっくり返してしまう可能性のあり、ボランティアのレスキュー隊は3トンもするクジラがに潰されない様に踏ん張らなければならない。

クジラの尾鰭は救助の際にレスキュー隊に危険を及ぼす可能性があるため、ノートン氏は尾鰭を避ける様にクジラの横で冷たい水が入ったバケツを用意して立っていた。他のボランティアの人たちはクジラの頭の側で目についた砂を洗い流していた。

ノートン氏は、クジラ達はレスキュー隊の人に対して一頭一頭違う反応を見せたという。

“何頭かのクジラはあまり動かないので、、死にかかっているのか、人間が助けようとしているのを分かって。「私は大丈夫、これらの他の種の動物たち(ボランティアの人間のこと)は、私たちの身体を支え、呼吸を助け、体温を低く保ってくれている」などと私たちボランティアに語りかけようとしているのかが分からず不安になることもあります”

ノートン氏は、クジラ達もボランティアと一緒に頑張っているように感じたという。

 

“クジラ達はとても大人しく、彼らが私たちが助けようとしているのを分かっているかの様で感激しました”

“さらにクジラ達は私たちのレスキューの段取りが分かっているかのようでした”

“彼らの呼吸のタイミングが大事なんです。水をかけてあげる際、噴気孔の中に水が入らない様に、呼吸と呼吸の間を狙って噴気孔が閉じた時に水をかけます”

 

“それぞれの持ち場にいるそれぞれの個体は全く違う状態にあり、全く違うプロジェクトの様なので、救助工程がうまく機能している事を素晴らしく思います”

海に帰った群れはまた座礁しないことをノートン氏は願います。

“私は、「子供達に、マッコーリー湾は危険な所で、そこで数年前に多くの親戚を亡くしたのだから絶対に2度と近づくなと教えてやるんだぞ!」とクジラ達に向かって語りかけました”

 

多くの命を救った’

海洋学者であるジュリー・マッキンズ博士は先週の月曜日の夜、座礁したクジラの救助作業に関して助言を求める連絡を受けた。

IMAS(Institute for Marine and Antarctic Studies: 海洋南極学研究所)の研究者であるマッキンズ博士は座礁したクジラを救助した経験があり、その様な状況の為に訓練を受け手助けができるボランティアリストに名を連ねる。

彼女がいうには、入江の浅瀬に多くのクジラがいるという自然界ではまれな状況である座礁の場合は、レスキュー部隊は何時間も水の中にクジラ達と一緒にいなければならない。

 

体力的にとてもきつい。クジラは小さな動物ではなく、砂州にいることもあるのでかなりの距離を引っ張らないとボートに乗せられないこともある”とマッキンズ博士はいう。

 

“作業中はとても寒いが、環境は整っている。火を焚いているし温かい飲み物もある。水の外の出て乾いた場所で暖まった後にもう一度水の中に戻ることができます”

救うことができなかったクジラが何頭かいる中、レスキュー部隊は良い結果に集中するように努めたとマッキンズ博士は言う。

“私たちの助けがなければクジラ達はかなり危険な状態に陥っていたでしょう。私たちは、クジラの苦痛を和らげたり自由にしてあげるためにそれぞれができることを行います。それが私たちの仕事の一つであり、すると決めたことです。苦しみから解放してあげることが私たちが目指す所です”

マッキンズ博士は続けて、109頭のクジラを救うことができたと思うと苦労が報われた気がする、と言う。

“救助を行って良かったと思います。毎日命を救えたことは称えられることだと思いますし、実際に多くの命を救いました。”

“クジラの救助に関わることができて素晴らしく思います。私たちはみんな、もしかしたら無謀なのではいか、と最初は思ったと思います。本当にみんなの努力の賜物です”

 

クジラ達は紛れもなくお互いで話し合っていた

Surf Lifesaving Tasmania(サーフライフセーブ タスマニア)のボランティアであるジュリアン・ムーア氏は水中から多くの人間を救った経験はあるが、クジラを救った経験は無かった。

“ずっと浅瀬で動かずにいると血液の循環が悪くなり、クジラ達の体は麻痺してしまうので、私たちは、クジラ達のそばにいてクジラの体を左右に動かすように言われました。クジラ達を解放した時に彼らが泳いでいって、戻ってこなくても良い様にするためです”、ムーア氏は言う。

“決して暖かくは無かったです。しかし幸運なことに、Surf Lifesaving Tasmaniaはドライスーツを沢山持っていたので、メンバーのみんなは問題なく長い間水の中にいることができました”

 

先週の火曜以降、ムーア氏と他のライフセーバーチームは、水中での救助作業の安全確保とレスキュー部隊のボートでの行き来を指揮し、さらにはクジラ達をマットやトレーラーへ乗せてボートの横に保定し沖合へと運ぶ作業も手伝った。

クジラ達は人間に対してとても安心している様に見えたが、絶えずクジラ達は鳴いていた。

“クジラ達は確かにお互いに話し合っていました。コミュニケーションを沢山取っているところを見て本当に驚きました。”

ムーア氏が一番達成感を感じたのは、ボートに乗ってクジラ達を広い海に返してあげる瞬間だと言う。

“沖合にでてクジラを解放して、さらに彼らが遠くへ泳いで行く瞬間は、とても素敵な気分になりました。”

 

 

〜感想〜

この集団座礁が起きた時、私はタスマニアに住んでおり、オーストラリア史上最悪の集団座礁として一大ニュースでした。

非常に多くのクジラが浅瀬で動けなくなり、何頭も力尽きている様子を上空からとらえた映像は衝撃的でした。

鯨類の集団座礁の原因は様々な説があり、今回のタスマニアの集団座礁の原因もはっきりとは分かっていません。

大きな動物相手に水中での作業ということで、技術的にも体力的にもきつい作業でしたが、ボランティアの方々や関係者の方々は全力を尽くし、多くの命を救うことができました。

この出来事は関わった人たちの心だけでなく、多くのタスマニア民、そしてオーストラリア民の心にもずっと残ることでしょう。

 

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