野生ビルビーがカラウィンヤ国立公園でこの70年で初めて発見された 2022年3月01日
2022/03/01
『Wild bilbies found in Currawinya National Park for first time in 70years 』(英文PDF)
ABC Western Australia
2021年11月15日
Ellie Grounds記
担当:R.M.
【要約】
それはある夜のことだった。ケビン・ブラッドリーは言った。「その出来事は将来絶対に絶対に忘れないでしょう。」
5月のある夕方、彼は南西クイーンズランドにあるカラウィンヤ国立公園の柵で囲まれた内側に生息するビルビーの日常的な調査を行っていた。その時遠くに動くものを見たのだ。
それは、20年以上ビルビーの保護活動を行ってきた彼にとっても特別な何かだった。
「この小さな動物が道沿いに跳ねていくのを私は見たのです。」ブラッドリー氏は言った。「自分の目を疑ったよ。」
「私は空想か、睡眠不足か何かで幻覚を起こしているのかと思いました。しかしもちろんそれが何かわかりました。」
ビルビーだ。
フェンスの外で。
ブリスベンの西約830km、ニューサウスウェールズの州堺近くのBudjitiカントリーにある国立公園で野生のビルビーを見かけたのは1950年以来なかったことだ。
「私は体が火照り興奮した」
ブラッドリー氏はビルビー救済基金のCEOだ。
基金の活動は、クイーンズランドで絶滅危惧種であるビルビーを繁殖させ、カラウィンヤ国立公園内25キロ平米にわたる囲いの中に放すことだ。
囲いの中には、2018年以来野良猫は入って来ていない。
2019年、基金は6匹の人口繁殖したビルビーを、フェンスで囲まれた保護域内に放した。
今では200匹以上が生存している。
ブラッドリー氏は、この小さな長毛有袋類の救済に人生を捧げているが、野生のビルビーはまだ1匹も見たことがなかった。
「これはとても信じられないことです。」と彼は言った。
「私の体が火照り、とても興奮しました。」
カサンドラ・アーキンストールは、5月は観察旅行中だった。
彼女はビルビー救済基金のボランティアであり、博士課程の学生でもあるのだが、「それは全く夢みたいなことです。」と言った。
「ケビンは朝かなり早く来て、彼が何を見たか私に話してくれました。それは本当に信じられないことです。」
ケビンとカサンドラは車に乗り込み、ブラッドリー氏がビルビーを見かけた場所に戻った。
「丁度道路脇にビルビーの足跡を見たことは、まさに非現実的です。」とアーキンストールさんは言った。
「私たちは歩き回り始めました。そう、他のビルビーはどこにいるのか、そして見かけたビルビーはどこから来たのかと考えながら。」
『少なくともつがいがいると言っても過言ではない』
2人はヘリコプターに乗り、フェンスの外にもっとビルビーの巣穴や足跡のようなものがないか、上空から探し回った。
その後の地上調査で、彼らの疑問に対する確たる証拠が見つかった。
「いくつかのビルビーの存在を示すのに妥当な証拠、つまり最近使われた複数の巣穴や食べ残し、またビルビーの糞が残されている場所が何か所か見つかったのです。」とアーキンストールさんは言った。
彼らは、現在使われているような巣穴に罠を仕掛け、1匹のメスのビルビーを捕まえた。そしてアーキンストールさんは、そのビルビーから耳の組織サンプルを採取した。
その組織を、フェンスの内側で野生として生まれたビルビーの遺伝物質と検証するのだ。そうすれば捕らえたビルビーが、フェンス内のものと血縁があるかわかるだろう。
ビルビーは雌雄で縄張り行動が異なるため、またブラッドリー氏が最初にビルビーを見かけた場所と、アーキンストールさんが罠でビルビーを捕らえた場所は離れているため、2人はそれぞれのビルビーが異なる個体だと確信している。
「少なくとも1組はいると言ってよいと思います。」アーキンストールさんは言った。
3年間で33倍に膨れ上がったフェンス内のビルビーの人口増加が、最初のビルビーがフェンス内から外へ移動した理由になり得ると思う。
ビルビー同志のいさかい ― アーキンストールさんは笑って 「ビルビーファイトクラブ」― も別の理由になる。
アーキンストールさんは続けて言った。「例えばですが、もしフェンスのすぐ近くにビルビーのコロニーがあったとして、フェンス内でいじめられたビルビーがフェンスを飛び越えるほどの高さまで蹴り上げられることはあり得ます。」
計画が始まる
ビルビー救済基金は、カラウィンヤ国立公園でフェンスの外の野生ビルビー人口を再生する方向で活動してきた。しかし今フェンス内のビルビーにとってはその活動のスピードアップが必要と思われる。
ビルビーの巣穴や糞がフェンスの外で見つかった。(提供:カサンドラ・アーキンストール)
アーキンストールさんは言った。「多分当初の計画より早めるだろう。それは流れとしては良いことだと思います。」
「新しい計画が始まります。」ブラッドリー氏は言った。
「ビルビーたちを野生で生存させ、野生のまま繁殖させるという、実際の活動が始まります。」
ビルビー救済基金は今新しい計画を立ち上げ、カラウィンヤ国立公園の外でも、フェンス内同様、ビルビーの1番の敵である野良猫を根絶する。
「私たちの基金は長い間、フェンスの中でビルビーを安全に守っていると理解されてきました。しかしそれはビルビーを自然の世界に帰すという本来の対策ではなかったのです。」とブラッドリー氏は言った。
<感想>
ブラッドリー氏が一瞬野生のビルビーを見かけたことから、すぐに野生の状態でビルビーを守る活動の促進につながったことは、柔軟で実践的で素晴らしいと思う。野生動物保護の基本だと思う。ただフェンスで囲まれた中で天敵の脅威を無くし、ビルビーの生存、繁殖を守ることと比べ、完全な野生の状態で同じことをするのは数倍難しいと思う。今後の活動報告もあったら知りたい。