2010年9月 体験談
2016/10/11
トレーニングコース 初級編
麻布大学 獣医学部獣医学科 2年 伊藤ひとみ
最初に見学したカランビン・サンクチュアリ野生動物病院では、人為的なケガではなくオス同士のケンカで傷ついた水トカゲが運ばれてきて診療をしていて驚き ました。日本における野生動物は、誰のものでもなく放任主義ですが、オーストラリアにおける野生動物は「国の所有物」なので、傷付いた動物がいれば治療す るのかな、と思いました。オーストラリアと日本との野生動物に対する扱いが異なっていることに興味を持ちました。
それからブリスベンへ移動し、モギルコアラ病院に3日間実習させてもらいました。安楽死させるコアラが多くとてもショックを受けました。安楽死させた個体 は、私たちの勉強のために解剖させてもらいました。オーストラリアの獣医学生でもなかなかできない貴重な体験をすることができました。ちゃんと1頭1頭解剖するにあたって政府から許可を得るそうですが、安楽死させた個体で勉強させてもらう、このような献体制度が日本でもあれば良いな、と思いました。
植林もやらせてもらいました。近年、土地開発が進み、ユーカリが伐採されて減少し続けており、病院の近くにプランテーションを作っているそうです。
次に見学したイプスイッチコアラ保護協会で活動をするボランティアの方から、「コアラの保護で一番重要なのは、子どもをちゃんと野生復帰させることです。 1頭1頭助けるのは大事なことだけれど、最近では生息地をいかに残すか、ということに主旨が移ってきています。」という話を聞き、モギルコアラ病院で体験 した植林の重要さに改めて気付かされました。
その後、ゴールドコーストにあるデービッドフレイ野生動物公園で3日間実習を行いました。ワニ、鳥類、木登りカンガルー、ワラビー、絶滅危惧種の鳥などの 餌やりをしました。エサのやり方には、それぞれ工夫があり、日本の動物園よりもエンリッチメントが意識されている印象を受けました。また、展示されている 動物たちがオーストラリア固有種だからこそなのだと思いますが、動物園の設計がとても開放的で驚きました。
最後に見学したデイジーヒル・コアラセンターでは、午前中に車で移動しカラーを付けたコアラをトラッキングしました。最初はラジオを頼りに移動しますが、 コアラがいる近辺に到達すると、木にコアラが登った跡が残っていないか、辺りにフンが落ちていないかなどをチェックしながら探します。なかなか見つからな いものかと思っていましたが、車を降りてから15分くらいで見つけることができました。トラッキングは何もかもが初めての体験だったのでとても面白かった です。
トレーニングコースの2週間は、日本では経験できない、すばらしい体験ばかりでした。また、お世話になったAJWCEFの方々をはじめ、現地のレンジャー、獣医師の先生方から聞いた様々なお話はとても印象に残っています。オーストラリアでの全ての出会いに本当に感謝しています。トレーニングコースに参加できて良かったです。
日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医保健看護学科 2年 森 春子
いろいろな人と出会えたこと、そしてたくさんの事を学び、体験することができて、とても充実した15日間でした。オーストラリアと日本は同じ島国であるため、特殊な動植物がいるのは同じであるということは知っていたものの、実際にオーストラリア固有の動植物を間近に見、触ったのは初めてで、毎日発見することが多々ありました。
特 に驚いたのはコアラの手の形です。当然のように人間と近い形をしていると思い込んでいたので衝撃を受けました。またコアラはオーストラリアではたくさんい るのだろうとも思っていたのですが、実際は減少傾向にあって、市民が率先して保護活動を早めに始めているということを知って驚きとともに、市民の行動力に とても感心しました。その他にもたくさんの動物の世話を体験したり、動物自体のことを学んだりして動物の知識が増えた喜びや、動物の尊さを改めて感じまし た。可愛くて不思議で興味の底が尽きそうにない動物たちを守っていくためにこれからも活動に参加していきたいと思います。
日本獣医生命科学大学3年 菅原 愛
オーストラリアでしかできない非常に貴重な経験をたくさんする事が出来ました。AJWCEFスタッフ、現地のレンジャー、獣医師、このコースで共に学んだ友人たちとの出会いはとても刺激になり影響を受けました。
オーストラリアにしか居ない個性豊かな面白い動物たちがたくさん居ました。デービットフレイ野生動物公園では飼育作業をお手伝いさせて頂くことで、その 生態や動物公園で行われている保護繁殖、教育普及への取り組みについて学ぶことができました。レクチャーと実習が並行してあるので、レクチャー内容を、実 習で確かめることができ、知れば知るほど動物たちの魅力にどんどんとはまっていきました。動物たちが、自然に近い状態で飼育され、生き生きとしていることが印象的でした。
街中にも動物がたくさん居ました。夜、宿泊場所で寝る前、何かの鳴き声がうるさいと思って皆で外に出てみたら、子連れのポッサムが木の上でコウモリを威嚇していました。そのような野生の動物たちとの出会いも、とても面白かったです。
モギルコアラ病院では、毎日コアラが保護されていました。傷ついたコアラたちの運ばれてくる原因に少なからず人間が関わっていることを知り、 実際にそのようなコアラを見たことで、コアラたちを守るために何とかしなければならないという危機感を感じました。亡くなったコアラの解剖をさせて頂いた ことで、体の特徴を細かくみることができ、有袋類特有の繁殖に関わる生殖器をみられたことは、日本では絶対にできない貴重な経験であり、とても勉強になり ました。
オーストラリアでは、国民の野生動物に対する意識が日本に比べてとても高いと感じました。それにも関わらず、希少な動物たちはどんどん数を減らしていま す。オーストラリアで学んだたくさんのことを活かして、これから私は人と動物の共生できる道を探していきたいと思いました。