野生馬とオーストラリアンエコシステム 5

      2020/01/13

皆様、こんにちは。AJWCEFスタッフYukoです。いよいよ、完結編。まずは前回からの続きです。

Australian Brumbies

果たして“人道的な方法での駆除”とは何なのか?

政府が定めるブランビー達を駆除する主な方法が陸・空からの銃殺になります。果たしてこの方法が人道的なのか、多くの福祉団体の間でも意見が分かれます。この点で政府の対策に対して論争が繰り広げられているのですが、この時点になるとメディアが大々的にブランビーに関するニュースを取り上げてきますので、国民達の耳にもブランビーに関する情報が徐々に広がっていきます。

多くの動物関連団体が提言している“人道的駆除方法“としては、罠をしかけたり馬追いをして捕獲後、乗用馬として再調教して引き取り手を探す、不妊治療が挙げられています。
反対に政府、地方自治体がなぜ、銃殺を駆除方法として推奨しているのか、それは迅速かつ効率的に、低コストで駆除できる。また倫理的配慮として瞬時にブランビー達を殺すことができると主張しています。ちなみに、前回お話したRSPCAは動物を扱う上での原則を記載するCode of Practice(CoP)の作成に参加しており銃殺を支持しています。

save the brumbiesSTB

もうひとつ、ブランビー達を支持する団体の例としてSave the Brumbiesをご紹介しましょう。2000年設立、募金・ボランティア中心で運営され各州の支持団体を統括、NSW州に拠点を置く非営利団体です。
ブランビー達の福祉・幸福・保存を推進、そしてRSPCAの理念・管理原則を支持し、オーストラリアの生態系を守るためブランビー達の頭数管理も必須であるとしています。但し、銃殺による駆除方法には断固反対とし、現在政府方針の改定を求めています。

では、オーストラリアの生態系を守りながら、人間の生活に害なく、動物福祉を考えながら、どのような形でブランビー達を保護していく方法があるのでしょうか。多方面で模索は続いていますが、賛成派団体が行っている主な方法を見ていきましょう。

save the brumbies

①リーホーミング(捕獲して再調教し里親を探す)
Save the Brumbiesの場合、保護したブランビー達の90%が里親宅へ送られます。捕獲してからまずは新しい環境や人に慣らし、次の引き取り先に送るまで平均3-6か月掛かります。その間の費用として、輸送費、ブランディング(凍結焼印)、ID写真、DNAテスト(繁殖などに用いる場合近親交配を避けるため)、去勢、健康管理、預託、飼葉、初期調教など、1頭に付き平均$1200-$1500(約10-13万円)掛かりますが、この経費は全て寄付でまかなわれています。

Brumbies Sign②ブランビー保護区の設置
現在は私有地のみであり、多くのボランティア、また寄与される土地を保護区として設置しています。Save the Brumbiesの場合、2008年に数人の一般人による支援で1375エーカー(約556ヘクタール)の土地を保護区として設置することが出来ました。

③頭数抑制
ある程度の頭数は生態系の一部、野生馬として支持する団体もいます。

④不妊治療
但しこの治療のみでは頭数抑制は難しいとされています。

では、最後にブランビー達を保護することによってどのように自然保護につながるのでしょうか。
ブランビーの保護区(国立公園内)は開拓地域の対象外となりトラックや重機などを遠ざけ、多くの環境団体やブッシュウォーカーなどの自然愛好家達にも慣れ親しまれる場所を提供していて自然保護という形に繋がっている、とも主張されます。オーストラリアの土地は広大であり、水の少ない砂漠地域でも生息できるブランビー達との棲み分けは可能、と考える多くの保護団体が政府に対してその地の生態系にあまり害を与えない国立公園の一地域をブランビー達のための保護区として認め、提供してもらえるよう働きかけているのです。

さて、3章に渡ってブランビー達のオーストラリア国内にもたらす影響を賛成・反対派の視点からみていきましたが如何でしたでしょうか。広大な大陸、オーストラリアでブランビーによる被害の大きさは州や地域によってかなり違いがあります。直接的、間接的な被害、その被害の大きさによってブランビーをペストとして扱うのか、国宝として、福祉の観点から保護を訴えるのか、第三者がメディアの情報だけを信じて判断するのはとても難しいような気もします。

この記事をきっかけに

“人間を含めた生態系のバランス・野生動物との共存とは何なのか”
“野生動物の定義とは何なのか”
そして、何よりオーストラリア大地で走り回っているブランビー達について
これを機会に少しでも知って、考えていただければ幸いです。

長らくお付き合いいただきありがとうございました 🙂

<参考文献>
Save the Brumbies
http://www.savethebrumbies.org/

ABC NEWS By Olivia Ralph and Josh Becker Posted 2 February 2019 at 5:30 am
Feral brumby culls found by scientists to be crucial in ensuring survival of native ecosystems
https://www.abc.net.au/news/rural/2019-02-02/brumby-culling-found-to-be-crucial-in-ensuring-native-survival/10771160

RSPCA
Where can I find information on best practice management of feral horses?

https://kb.rspca.org.au/knowledge-base/where-can-i-find-information-on-best-practice-management-of-feral-horses/

Pest Smart
Feral horse – humaneness matrix

<写真>
- https://www.smh.com.au/environment/conservation/victoria-s-plan-to-control-feral-horses-puts-it-at-odds-with-nsw-20180601-p4ziyh.html
- https://www.change.org/p/australian-government-ban-aerial-culling-of-australian-brumbies-in-all-australian-states
-   save the brumbies logo
-   https://www.savethebrumbies.org/photo-gallery/

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