オーストラリア全土で展開するためのコアラのクラミジアワクチンが初めて承認された

   

英文 First koala chlamydia vaccine approved for rollout across Australia

発信元: ABC NEWS

記事発信日:  2025年9月10日

執筆者: Janel Shorthouse and Jessica Ross

担当: yuni

写真注釈: サンシャインコースト大学で行われたクラミジアワクチンの研究に参加したコアラ(ABC サンシャインコースト:ジャネル・ショートハウス)

要約

オーストラリアの獣医師規制機関は、国全体で展開するコアラのクラミジアワクチンを承認し、致命的になり得る性感染症に対する新たな希望をもたらしている。

獣医師らと保全グループによると、ワクチンの展開は苦しんでいるコアラのコロニーに生きるチャンスを与える重要なものだという。

今後の見通し

研究者たちは政府に対し、2026 年末までにクイーンズランド州とニューサウスウェールズ州におけるリスクあるコアラ個体群へのワクチン接種を行うための資金支援を呼びかけている。

記事本文

コアラは致命的な性感染症であるクラミジア感染症により、野生個体数が減少しているが、オーストラリア全土に展開されるクラミジアワクチンの承認を受けて、もうすぐその感染症から身を守れるようになる。

オーストラリア農薬・獣医薬品庁は、サンシャインコースト大学(以下、UniSC)が 10 年以上の研究の末に開発した一度投与型のワクチンを承認した。

これは、もはや試験的条件の制限をなくして国全土に展開することができ、国で最も脆弱な種の 1 つを守れることを意味する。

写真注釈:サンシャインコースト大学(UniSC)が開発したワクチンは 一回接種として使用できる(ABC サンシャインコースト:ジャネル・ショートハウス)

UniSC とクイーンズランド工科大学(以下、QUT)は、それぞれ別のワクチンを開発していたが、UniSC が初の承認を勝ち取った。

QUT の試験ワクチンは 2 回の投与が必要である一方で、UniSC のワクチンは 1回の投与でその効果が発揮される。

ワクチンは早急に必要とされている

クラミジア感染症はコアラに最も脅威をもたらすものの 1 つで、感染により痛みを伴う尿路感染や不妊症、失明を引き起こす可能性があり、死に至る。

UniSC 微生物学のピーター・ティムズ教授によると、一度投与型のワクチンは野生下における使用で実用的だという。

そのことは、同じコアラを2度捕獲することはほぼ不可能なので重要である」と話す。

写真注釈:サンシャインコースト大学でコアラの研究を牽引しているピーター・ティムズ教授(ABC サンシャインコースト:ジェシカ・ロス)

クイーンズランド州やニューサウスウェールズ州、そしてオーストラリアの首都特別地域において、コアラは2022 年に絶滅危惧種に指定された。

クイーンズランド州南東部では、野生コアラの個体数は 16,000 頭以下までに減少している。

ティムズ教授によれば、コアラは自動車との衝突や他の動物からの攻撃、そして現在も進む都市開発による生息地の減少により、その生存が脅威にさらされているという。

彼は新しいワクチンが早急に必要とされていると主張しており、「日々、コアラはその数を減らしているのだ」と話す。

「もし、全個体数にワクチン接種が行き届くことができれば、それは全体的な変化を起こせると私たちは知っている。」

クラミジア感染症の被害

UniSCのサム フィリップス上級研究員によると、過去3年にわたり実施された最大かつ過去最も長期の野生のコアラに対する研究において、このワクチンは良い結果を示した。フィリップス博士は「このワクチンは繁殖年齢中にクラミジアの症状を呈する可能性を減らすものである」とし、「それはまた、クラミジア感染による野生個体の死亡率を最低でも 65%減少させるものだ」と述べた。

そのワクチンは、コアラの免疫システムがクラミジア菌を認識して攻撃するようにトレーニングすることで作用する。

それは感染の確率を減らし、病気の進行を止め、そして場合により症状を改善させることができる。

これまでは抗生物質の投与が唯一の処置であった。しかし、それら抗生物質はコアラの消化を妨げるため、致命的になってしまう場合もあり、加えて依然として再感染を防ぐことができない。

写真注釈:ワクチンはコアラを守りやすくするもう一つの手段だと話す Dr.ジュリアン・グロスマーリさん(ABC:ジャネル・ショートハウス)

エンデヴァー獣医生態サービスの上級獣医師であるジュリアン・グロスマーリさんは、その病気で苦しむ多くのコアラを治療してきた。

彼が勤務する野生動物専門医療サービスでは、コアラの健康プログラムを手掛けており、大学のワクチン治験においてそのワクチンの接種を行ってきた。

「結膜炎により失明の危機に遭ったり、餌を自力で探すことができずに非常に痩せてしまったコアラも運ばれてくる。」と グロスマーリ獣医師は話す。

また、「膀胱炎により時には、尿により皮膚がただれてしまうことで皮膚が尿焼けを起こしたり、お尻が潰瘍化してしまったりする。」という。

「衰弱しているコアラが施設に運ばれてくるのを見ることは非常につらいことで、時にそれらコアラを助けられないこともある。」

グロスマーリ獣医師によれば、クラミジア感染症は既に生息地減少の圧力がかかっていたコアラにとって「とどめの一撃」になったという。

写真注釈:UniSCの研究者たちは一回接種型のワクチンは野生のコアラに適用する一つの治療選択肢であると言っている。

クイーンズランド保全評議会活動家のニッキー・モファットさんによると、ワクチンの承認はコアラ保全の期待の一歩であるが、その導入と資金調達に疑問があるという。

モファットさんは、「最も象徴的で危機にさらされている哺乳類の 1 種にとって、この効果的なワクチンは大きな変化となるだろう。現時点での大きな問題は、広くワクチン接種を展開できるか、政府から資金支援を受けられるか...また、資金不足の野生動物病院にとって手ごろな価格になるかどうかである。」と話す。

彼女はワクチンの展開について、「既に危機的状況にある野生個体群のために重要である」と述べた。

写真注釈:サンシャインコースト・ヤバ州有林で、コアラの頭数調査しながら観察・記録を行うニッキー・モファットさん (写真提供:パトリック・ウッド)

政府からの資金提供を呼びかけ

ティムズ教授によれば、ワクチンがリスクある個体群まで早急に届けられることが重要だという。

「私たちは少なくとも 1 種の減少傾向にあった個体数の例を見てきているが、このワクチンを使用することでその個体数は逆転し得る。」と彼は話す。

研究者たちは、州や連邦にそのワクチン展開への支援を呼びかけている。

彼らは 2026 年末までにクイーンズランド州及びニューサウスウェールズ州にてリスクあるコアラ個体群へのワクチン接種を望んでいる。

「私たちはワクチンを研究から実践へ進めるために助けが必要だ。」とティムズ教授は述べた。

パミストーンの州議員アリアナ・ドーランさんによると、クイーンズランド州は最近、ワクチンの登録準備を支援するために 10 万ドルを投資したという。

写真注釈:「州政府はワクチンの登録を準備することに資金を費やしている」と話すアリアナ・ドーランさん(ABC サンシャインコースト:ジャネル・ショートハウス)

ドーランさんは、「それはコアラ保全のための重要な節目である...これにより、私たちオーストラリアのアイコンを保存していくことができる。」と話す。

政府はまた、クイーンズランド州全域に野生動物病院を拡大するために約 4000 万ドルを今後 3 年で支援していくと約束したという。

感想

添削をいただいて自分で翻訳を試みた時には思いつかなかった表現の仕方があり、勉強になりました。

また、病名や症状などの医療用語についても知ることができ、参加したトレーニングコースを思い出しながら取り組めたように感じます。

今回挑戦してみた翻訳をこれからの語学学習にも役立てていきたいと思います。(yuni)

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