クイーンズランド州南東部のコアラは近い将来絶滅する可能性があるとRSPCAが警鐘を鳴らしている
英文 Koalas could be extinct in south-east Queensland in 'not-too-distant future', RSPCA says
記者: Liz Gwynn
発信元: ABC NEWS
記事発信日: 2025年5月28日
翻訳者: C.S
クイーンズランド州南東部において、野生コアラは1万6,000頭に満たない。
英国王立動物虐待防止協会(Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals:RSPCA)の専門家によると、毎年野生コアラの10%が動物病院に運び込まれ、そのうち半数しか生き残ることができない。
オーストラリアを象徴する有袋類であるコアラは、クラミジア、交通事故、犬や野生化した動物による攻撃に直面している。
また彼らの生息地に都市開発が忍び寄る脅威も受けている。
(図注釈)獣医がコアラの治療に使用する薬の不足
RSPCAクイーンズランドの野生動物獣医部門長であるティム・ポータス博士はコアラの数が減り続けていると言う。
「何も大きな変化がなく、コアラ生息地保護やクラミジアのための疾病管理対策がなければ、遠くない将来、クイーンズランド州南東部でコアラがいなくなる危険性がある。」と彼は述べた。
マキシマスとウィリアム
去年の終わり、西ブリスベンの野生動物病院に運ばれてきたコアラのマキシマスとウィリアムは先の見えない運命に直面した。
2頭ともクラミジアに感染しており、ほとんど目が見えなく、栄養失調と脱水状態になっていた。
西ブリスベンのウーガルーフォレストに野生復帰するまでマキシマスは6ヶ月の治療が必要だった。一方でウィリアムは約2ヶ月の治療を受けた後に同じ地域に復帰した。
(図注釈)イプスウィッチ周辺に生息するコアラは様々な脅威とストレスに晒されているとRSPCAクイーンズランドは述べた。
彼らの野生復帰は野生動物救助者にとって嬉しくもある反面、またすぐに保護されて戻って来るかもしれないと思うと複雑な気持ちになる。
「コアラたちがまた救助されて戻ってこないようにと願うが、残念なことに実際にはクラミジアに再び感染してしまう可能性があり、これは厳しい戦いである。」とポータス医師は語った。
「いくつかの利用可能なワクチンはあるが、すぐに手に入る状況ではない。可能ならば全てのコアラにワクチン接種を実施したいが、そのような状況ではない。」
コアラに迫る多数の危機
イプスウィッチ付近のウーガルーフォレストは450ヘクタール以上にも及び、大半の敷地がクイーンズランド政府により主要なコアラ生息地として指定されている。
またフクロモモンガ、カモノハシ、カンガルー、ワラビー、ハリモグラの生息地でもある。
(図注釈)ウーガルーフォレストで計画されている4つの開発案が環境アセスメントを受けている。
しかしその原生林の3分の1は約2000軒の住宅、商業センター、保育施設やスポーツ公園などを含む都市開発エリアとして計画されている。
(図注釈)レベッカ・ラーキン氏はコリングウッド公園のコアラの個体数が急激に減少したことに気づいた。
開発により、コアラたちが原生林の「島」のような限られた場所に追い詰められてしまい、車や犬との遭遇リスクが増加し、更なるストレスや病気に晒されてしまうおそれがある。
「何かがひとたび絶滅危惧種に指定されると、その動物の一頭一頭が保護される必要がある。」
「しかしこのシステムの一方では、何億ドルもの利益を得ている大手開発業者がいて、広く点在し、コミュニティを形成していない住宅を建てている」とイプスウィッチコアラ保護協会のレベッカ・ラーキン氏は語った。
(図注釈)10月、ウーガルーフォレスト近くで車との衝突により死亡したコアラの親仔
これらの開発事業はそれぞれ単体では脅威にはならないかもしれない。しかし全てが承認されたら、生息可能な地域が劇的に減少するだろう、と専門家は述べる。
「一見小さな影響でも、積み重なればやがて大きな脅威になる。より広い視点で見れば、これらの開発が積み重なることで深刻な影響が出ると判断せざるを得ないだろう。」
とクイーンズランド大学研究者のショーン・フィッツギボン博士は語った。
「しかしそのようには評価されず、一つずつ個別に評価されている。」
(図注釈)クイーンズランド大学野生動物研究者のショーン・フィッツギボン博士
イプスウィッチ市長のテレサ・ハーディング氏は声明で、その土地は私有地であり、「残念ながら」保護された森ではないと述べた。
市長によると、この敷地は約30年前に州政府により住宅開発のために指定された。
この土地はスプリングフィールド構造計画下にあり、「これらは1990年代にクイーンズランド州政府により、住宅開発を支援するために導入された」と市長は述べた。
(図注釈)イプスウィッチ市長のテレサ・ハーディングは開発のために指定された土地は保護林の一部ではないと述べた。
イプスウィッチ市議会は既に開発を承認しているが、連邦政府が環境アセスメントを実施して最終的に計画の実行を決定する。
4つの提案いずれも、国の環境法のもとで完全に評価される必要がある、と気候変動・エネルギー・環境・水資源を担当する連邦政府の広報担当者が述べた。
担当部署によると、提出されたいずれの案件についても、その部署の情報要件を十分に満たした予備文書の回答はまだ受け取っていないという。
ポータス博士によると、ウーガルーフォレストのようなコアラの生息地は開発から「隔離される」必要がある。
「人口増加は明らかでより多くの住宅が必要だ。しかし主要な生息地を対象としない、より包括的な戦略を検討する必要がある」と博士は語った。
絶滅の瀬戸際から回復した動物たち
研究者らは、指向性アンテナ付きの手持ち受信機を使用し、ブリスベン南西部の原生林で首輪のついたコアラを追跡・監視することができる。
その中にマチルダという若いコアラがいる。追い出されてしまったそのコアラは、ワコルのプー・コーナー・ブッシュランド保護区で地域的に絶滅した個体群を復活させるために活用されている。
(図注釈)プー・コーナー・ブッシュランド保護区のコアラ研究プログラムのコアラ
そのプログラムは市内全体で展開されている。
「救助されたコアラや新しい住まいを必要とする若いコアラたちをその地域に再導入することができた」とフィッツギボン博士は語った。
「私たちは今や十数頭以上を再導入しており、第一世代はすでに育ち、現在は第二世代が生まれている。なので悪いニュースばかりではない。」
(図注釈)コアラ研究プログラムはプー・コーナー・ブッシュランド保護区で健康的な個体群の復活を目指す。
ブリスベン市議会と研究機関の共同プロジェクトであるコアラ研究プログラムは、新しい生息地に適応し、新しい個体群を形成できる可能性が最も高いコアラを慎重に選んでいる。
「私が驚かされるのは、コアラは非常に適応力があり、かなりたくましいということだ。」とフィッツギボン博士は語った。
「彼らは適切な食べ物となる木と森林のつながりが必要だ。それはとても重要だ。」
(図注釈)治療のためにRSPCAクイーンズランドに運び込まれるコアラの約半数は怪我により死亡する。
2032年オリンピックまであと7年となり、開発と環境の適切なバランスを取る必要性がこれまで以上に重要となっている、と専門家たちは述べる。
「オリンピックに訪れた観光客に『野生のコアラを見せてあげたかったけど、今は絶滅してしまったから見せられない。ごめんなさい』と言う人間になりたくない。」とラーキン氏は語った。
「人間も動物と同じくらい、森を必要としている。」
感想
今回の文章を通して、人間と野生動物の関わりについて改めて深く考えさせられました。
私たちの暮らしと自然は決して切り離せないものであり、今後は政府や州にも、自然を優先した都市開発をより一層考えて欲しいと思います。 (C.S)