サメ避けネットに絡まった野生のクジラの2時間に及ぶ救出劇
英語記事 202506 Dramatic two-hour rescue to free whale tangled in shark nets
Greg Stolz記
The Courier Mail(クーリエ・メイル)
2025年6月12日
担当 I.A
ゴールドコースト沖で、網にかかった野生のザトウクジラを、居合わせた人々が善意で救出しようと試みたものの、かえって状況を悪化させてしまった。この件について、海洋専門家は警鐘を鳴らしている。
クジラのレスキューチームは、サメ避けネットがひどく絡んだザトウクジラをゴールドコースト沖にて解放した。彼らは、今回の事故が今年のクジラの回遊シーズンに多く発生するかもしれない絡まり事故の始まりとなるのではないかと懸念を抱いている。
また彼らは、善意の人々が救助をより困難かつ危険にしてしまった事を受け、網に絡まったザトウクジラを自力で助けようとしないよう一般市民に強くお願いした。
クジラは、木曜日の朝にゴールドコースト南部にあるグリーンマウント沖でサメ避けネットに引っ掛かった後、シーワールド財団の人々による2時間に及ぶ救出作業で解放された。
シーワールドの船長であるアンディ・マルヴィリーさんは、「彼のチームがクジラの下に着いた時には、善意の人々により「解放された」とされたが、網がひどく絡んだ状態であった」という。
写真注釈クジラの救出チームは、ゴールドコースト沖にてサメ避けネットにひどく絡まったザトウクジラを解放した。 (写真:シーワールド財団)
アンディーさんはこう語った。 「残念ながら、我々が到着した時には人々が海の中におり、網を切断しクジラを解放しようとしていた。」
「彼らは善意により救出を試みていたが、それにより我々の救出作業はさらに難しくなった。なぜなら、クジラは全身を網に覆われているものの動き回れる状態にあったからだ。」
「救出は比較的容易に進むはずだったが、網に全身をおおわれたクジラの救出作業に2時間を要する結果となった。」
「(クジラはネットに覆われた状態で海中に潜ったり泳いだりし始め、湾から離れようとしていた。」
写真注釈 一般市民が救出を試みたが、かえって状況を悪化させる結果となってしまった。 (写真:シーワールド財団)
マルヴィリーさんは、
「クジラの動きをゆっくりにするために、クジラに大きなブイをなんとか取り付け、特殊な切断器具を使いネットを切断することでクジラを解放することができた。」と語った。
「我々は、慌てず時間をかけて行った。急いでネットを切断をすることはしたくなかった。」 と彼は話した。
「今回の救出において難しかった点は、ネットの多くがクジラの身体の下部にあった点だ。そのため、我々はクジラの身体を回転させる必要があった。今回の子はとても良い子で、時々頭を上に持ち上げてくれたため、おかげで顔に絡まった網を全て取り除くことができた。」
マルヴィリーさんは「クジラの回遊シーズンは始まったばかりであり、我々はこのよう な不運な出来事が今後さらに起こると予想している。」と言った。
写真注釈ザトウクジラの周りにサメ避けネットが巻き付いている様子(写真:シーワールド財団)
彼はこう語った。
「残念ながら、今後さらに救助要請が増えると思うが、我々シーワールドは常に出動する準備が出来ている。」
「我々が必要とされない事を願っているが、必要であれば我々はすぐに駆け付ける。」
クリサフリ州政権は最近、ゴールドコーストからバンダバーグまでのビーチにおけるサメ避けネットとドラムライン(訳注:大型のサメを餌付きの釣り針で捕獲する水中設置罠のこと)の追加を伴う、サメ管理(抑制)プログラムの拡大の計画を発表し、環境保護団体から非難を浴びている。
政府は、遊泳者の安全の最優先および数十億ドル規模の観光産業を保護するためとし、プログラム拡大を擁護した。
今回のクジラの絡まり事故を受けて、オーストラリアの政党である「グリーンズ」は、アルバニージ政権に対し、クイーンズランド州におけるサメ管理(抑制)プログラムの拡大を取り止めるよう改めて求めた。
グリーンズ党の健全な海洋政策報道官である上院議員のウィッシュ・ウィルソンさんはこう語る。
「サメ避けネットが海洋生物にどのようなダメージを与えるかは、まさに私たちの目の前で起こっている事が証拠であるが、クイーンズランド政府はまだその事実を無視し続けている。」
「サメ避けネットは、海洋生物の大規模な被害を引き起こす。また、エビデンスはサメ避けネットは我々のビーチを安全にしないことを証明している。事実、エビデンスはサメ避けネットに絡まった海洋生物をサメが食べに来る場所となる事から、サメ避けネットはサメをビーチに引き寄せる可能性を示している。」
「連邦法の下において、アルバニージ政権はクイーンズランド州及びニューサウスウェールズ州に導入された致死性のサメ除けネットやドラムラインにより殺されている海洋生物を含め、絶滅危惧の海洋生物を保護する法的責任がある。」
ウィッシュ・ウィルソン上院議員は、マレー・ワット連邦環境大臣にオーストラリアの環境法の改正計画の一環として、州で管理されている「致死性」のるサメネットプログラムにおける既存の免除措置を撤廃するよう強く要求する書面を書いたと話した。
「時代遅れで効果の低いサメ除けネットや致死性のあるドラムラインの代わりとなる、最新の代替品への投資を加速させることで、政府は海で活動する人たちの安全を守ることができる。シャークシールドのような個人用サメ避け装置やサメ監視計画、環境に配慮したサメ防護柵、噛みつき防止ウェットスーツ、公共教育の増大などはたくさんある新しいサメのリスクを軽減する代替案の一部である。」と彼は語った。
・感想~翻訳してみて~
今回、初めて翻訳のお手伝いをさせていただきました。実際に作業を進める中で、文法面で何度も苦戦しました。特に長文は、どこで文章の区切りを付けるべきか判断が難しく、戸惑う場面が多くありました。また、同じ内容を伝えていても、訳し方によって強調される部分が変わってしまうこともあり、本文からどの部分を最も伝えたいのかを読み取り、それを踏まえて訳文を考えることの大切さを学びました。さらに、直訳では不自然に聞こえてしまう箇所もあったため、日本語として読みやすくなるよう表現を工夫することも重要だと感じました。(I.A)
・感想~記事に関して~
今回、サメから人々を守るための「サメ避けネット」が存在すること、そしてそのネットによって海洋生物が犠牲になっていることを初めて知り、とても驚きました。単に人間にとって脅威となる存在を排除するのではなく、まずはサメという生き物を理解し、その上でどういった対策を取れば双方にとって良い方向に進めるのかを考えていくことが大切だと思いました。本文にもあった通り、サメやその他の海洋生物の行動を制限したり、生命を脅かしたりするのではなく、人間が自らの身を守る手段(噛みつき防止ウェットスーツや監視システムなど)を強化することが最善なのではないかと思います。何より、私たちは海に「お邪魔している」立場であるという意識を持ち、自分たちの行動を見直すことが第一歩なのではないかと感じました。
また、一般市民が善意で行った救助活動がかえって事態を悪化させてしまった件については、悪意のない行動であったからこそ、とても悲しい出来事だと感じました。こうした悲劇を繰り返さないために、海洋生物の救助を専門とするチームの存在や、彼らに救助要請を行えることをしっかりと周知していくことが重要だと思います。そのためにも、公共教育の増大は積極的に進めるべき対策だと改めて感じました。
今回、海外で起きている海洋問題について知ることができたので、今後は他にどのような問題が生じているのか、それらに対してどのようなアプローチを取ればいいのかなども考えていきたいと思います。また、このような問題は日本国内でも起こっているはずなので、日本ではどのような海洋問題が生じているのかについても調べてみようと思います。(I.A)