ロードキルの減少と絶滅危惧種の野生動物の保護を助けるための仮想柵 2021年5月11日
『Virtual fencing aims to reduce roadkill and help protect endangered wildlife』(英文PDF)
ABC サンシャインコースト
ティム ウォン シー 著
2020年6月2日
担当:金谷美里
《要約》
仮想柵(目に見えない柵のこと)は、ロードキル(路上で動物を轢き殺すこと)を減らし、絶滅危惧種の野生生物を保護することを目的としています。
マジンバ在住のクリスティン・ピッチャーはロードキルの量を懸念して、この地域に設置される仮想柵について地方議会に働きかけました。
「私はロードキルについて様々な近所の住民と話し、彼らはその現状についてかなり動揺しました...特に数匹のカンガルーが轢かれて死んだまま放置されていたということがあったので」と彼女は言いました。
「その地域にはカンガルーを轢いてしまい、車を傷つけてしまった人が二人いました。」
評議会とサンシャインコースト大学は2018年8月に仮想柵の小規模な試験を開始し、その後地域の支援を受けて地域全体に拡大しました。
仮想柵はヨーロッパの技術に基づいており、道路脇のポールに取り付けられた装置が含まれています。
この装置は、車のヘッドライトによって起動し、近くの野生生物に車が接近していることを警告するためにブーンという音と点滅する光を発します。
ピッチャーさんは、1月にマジンバ地域で導入されて以来死んだカンガルーを見たことがないと言いました。
サンシャインコースト議会の広報担当者は、すべての試験場の監視は「まだ進行中であり」、今年後半に見直されると言いました。
仮想柵の試験は、ビクトリア州のフィリップ島でも進行中です。ここでは、スワンプワラビーとポッサムロードキルの主な犠牲者です。
ビクトリア大学の環境科学の講師であるクリスティン・コネリー博士は、この技術は動物を保護するが住処を追いやることはしないため「本当の可能性」を示したと言いました。
「動物を安全にさせるのに十分であり、生息地内の資源を利用するために動物達が動きまわることを制限することがありません。」と彼女は言いました。
ロードキルの衝撃は行動を引き起こす
タスマニアを拠点とする企業ワイルドライフ セーフティー ソルーションはこの技術を地方自治体に販売し、創設者のジャックス ワンポールは、南アフリカ最大の動物保護区の1つであるクルーガー国立公園の近くで育った後、野生生物の保護に情熱を注いでいます。
彼は2013年にタスマニアを訪れたとき、タスマニアでのロードキルの量に「愕然とした」ことを思い出しました。「当然、何かをしなければならないと感じました」とスワンポール氏は言いました。
「そこには解決策がないように感じました。
「私たちはオーストラリアの野生生物で試してみようと考えました。」
しかしスワンポール氏は、その技術が保護できる種を確立するためにはより多くの作業が必要であると述べました。
「私たちはそれがすべての野生生物に作用することを明確に確立する必要があります。そして、それにはさらにいくつかの研究を必要とします。」
しかし彼は、ロードキルにおいてどんな減少も前向きな結果であると述べました。
「特に物理的な柵のような他の緩和方法と比較すると、物理的な柵は10倍のコストがかかり仮想柵と同じ結果は得られません。」
タスマニアでの試験中にロードキルが半分に減少
タスマニアデビルを救う会の野生生物学者であるサム フォックスさんは、2014年から2017年にかけてオーストラリアで最初に行われた仮想柵の試験に参加しました。
これは、タスマニア北西部のアーサーリバーとマラワの間の道路で行われました。
タスマニア パディメロン(ヤブワラビー属)とベネットワラビーは、この地域でロードキルの被害を受ける主な動物でした。
フォックス博士は、フェンスで囲まれたセクションでは102匹であったのに対し、フェンスで囲まれていないエリアでは408匹の動物の死亡が記録されたと述べました。
「仮想柵のある地域では、ロードキルが50%減少した」と彼女は述べました。
フォックス博士は、この結果は、この技術が国の他の地域でのロードキルを減らすのに役立つ可能性があることを示していると述べました。
「仮想柵に適した道路にそれらを設置すれば、非常に成功する可能性があります」と彼女は言いました。
(写真下の文)
仮想柵はベネットワラビーを含む動物たちを保護するために設計されています。(提供:サムフォックス博士)
【感想】
コストの問題は野生動物管理において大きな問題だと思います。また、日本においてもロードキルが問題になることはしばしばあります。仮想柵はコスト抑えつつこのように大きな効果を発揮することが出来るので、日本でも取り入れられるようになったらよいなと感じました。