2019年3月 体験談(上級)
日本獣医生命科学大学 4年 藤井 千紘
オーストラリア上級トレーニングコースに参加させていただいた、藤井と申します。トレーニングコースの参加に迷っている人、不安な人に是非読んでいただきたいです。
今回のトレーニングコースは私自身ほぼ初海外の上、知らない人達と生活を共にする、ということでかなり大きな不安を抱えつつ参加しました。
トレーニングコースに申し込みをしてからは、メールで親切に対応していただいたり、行程表等も丁寧で、講義のデータも事前に送っていただいていたので、準備はしっかり行うことが出来ました。
今回は10人の仲間が集まり、多くが獣医学生でした。また、年齢層もバラバラでした。
実習内容は、ざっくり分けて下記のような4つの実習を行いました。
・シーカヤックによる野生動物の観察
・オオコウモリについてのレクチャー
・currumbin wildlife hospitalでの実習
・野生動物のレンジャーさんへの訪問
中でも印象的だったcurrumbin wildlife hospitalでの実習について書かせていただきます。
currumbin wildlife hospitalでの実習について
Currumbin Wildlife Sanctuary内にある、currumbin wildlife hospitalにて4日間実習させていただきました。
病院内での治療を見せていただくのは勿論、手術前準備や薬用量の計算、内視鏡の実践、レントゲン撮影等もやらせていただき、かなり沢山の内容を学べることができました。
有袋類についての講義や剖検、施設やバックヤードの案内等も学ぶことが多く、とにかくメモを取る手が皆止まりませんでした。
病院の先生方も皆さん本当に優しい方々で、たどたどしい英語で質問してもこちらの意図を汲み取ってくれ、丁寧に答えて下さりました。おかげで沢山質問することができ、後悔することなく病院を後にできました。
最初は皆遠慮がちでしたが、徐々に質問が増えたり、病院のボランティアの方とお喋りしたりと、積極的になっていける人が多かったと思います。
4日間の病院での実習は本当に新しいことばかりで楽しく、濃密で、より将来やりたいことが明確化した実習でした。
病院を後にする時、皆寂しいね、と言い合っており、私もとても後ろ髪引かれながら帰りました。
オーストラリアと日本の動物に対する意識の違い
オオコウモリのレクチャーの際にAJWCEFの水野先生の講義がありましたが、中でも印象的だったのが、オーストラリアと日本の動物に対する意識の違いです。
何となく、オーストラリアは動物を大切にする、でも日本は徹底的に排除したがる、というイメージはありましたが、両者の良い所や悪い所、どちらも改めて考えることができ、意識が変わりました。
ネットで調べたり、あるいは少し学校で学んだりはできるかもしれませんが、実際現地に行って自分の目で見たり聞いたり感じることで、改めて日本との違いを痛感することができました。観光では絶対に気付けないことなので、今回トレーニングコースという形でオーストラリアに来られて本当に良かったと思います。
私がトレーニングコースをオススメする理由
トレーニングコースに参加したいけど迷っている、という方は、間違いなく参加した方が良いと思います。
今の社会は気軽に沢山の情報が手に入り、世界各地で何が起きているか、簡単に把握することができます。
しかし、実際にはもっと残酷な現状があったり、もっと知らなければいけないことが沢山あります。
実際に自分の足で外に出て、見て、聞いて、学びに行かないと知ることが出来ないことばかりです。
私は実習で多くのことを勉強できただけでなく、間違いなく自分の世界が広がりました。
迷っていたら、勇気を出して1歩踏み出してみて下さい。自分の人生の糧になります。
今回の実習にあたって、本当に仲良くしてくれた実習生の皆、実習プログラムを組んでくださった病院の先生方、そして本当に沢山お世話になったAJWCEFの皆さんに心から感謝します。
岩手大学共同獣医学科5年 水田晴也
以前から参加したいと思っていたこのトレーニングコースに,ようやく参加することができました。私は野生動物に関わる獣医師になりたいと思っており,そのためには海外の野生動物獣医師の仕事も見ておくべきだと考え参加しました。コースの9日間は新たな発見であふれており,本当にあっという間でした。
日本とオーストラリアでは獣医療や動物公園の展示法など様々な点で違いがあり,それぞれ良いところも悪いところもたくさんありました。特に印象に残っているのは,日本とオーストラリアの野生動物に対する考え方の違いです。日本では野生動物を害獣として駆除することもありますが,オーストラリアでは人と野生動物の距離が近いにもかかわらずそういったことはなく,野生動物の保護に関心の高いボランティアの方が多くいると思いました。人間社会と野生動物の共生を目指すためにはどうすればよいのか,双方を踏まえて自分で考えなければならないと思いました。
また,オーストラリア固有の有袋類と単孔類の生態,解剖,生理について学ぶことができました。有胎盤類と別に適応放散を果たした彼らの生態はきっと面白いに違いないと思っていたのですが,特に繁殖生理においては想像をはるかに超えて興味深いものでした。
唯一心配だった言葉の壁も,たいしたものではありませんでした。簡単な単語の羅列でも現地の人は理解して応えてくれました。なにより,実習先の施設の方々だけでなく,通りすがりの人ですら笑顔で挨拶や世間話をしてくれたことが,とても楽しかったです。
9日間ではオーストラリアの野生動物事情のほんの一部しか見ることができなかったと思いますが,非常に有意義な時間を過ごしました。一緒に参加したメンバーとは学年関係なく仲良くなり,未知の食材で自炊に挑んだり,ゲームをしたりして盛り上がりました。「もっと早く参加すればよかった」と口惜しく思います。そうすれば英語の勉強や留学もしていたかもしれません。今回の経験が国際的な将来への第1歩であり,これからできることはたくさんあるので,今回得た経験とネットワークを活かしたいと思います。参加を迷っている方は思い切って申し込むことをお勧めします。自分の世界が大きく広がるはずです。
F・C 大学生
カランビン野生動物病院
野生動物病院を見学するのは初めてなのでとてもワクワクしました。カランビン動物病院は年間一万匹以上の動物を治療する非常に忙しい病院で、毎日たくさんのケガした野生動物が運ばれてきましたが、獣医師の先生方や看護師さんたちの表情から焦りなど一切感じられず、いつも優しい笑顔で仕事をなさっていることは一番印象的でした。
たくさんの症例を見せていただいたのみならず、内視鏡の使い方、骨折した部位の固定の仕方、手術前の消毒の仕方、麻酔銃の使い方、鳥の羽の移植方法、亀の甲羅骨折の修復法…などについて実際に練習させていただいたものもたくさんあって大変勉強になりました。
院長のMichael先生をはじめ、一番お世話になったAndrew先生、笑顔がとても素敵なCamille先生、飴をたくさんくれたSarahさんおよびスタッフの皆様のおかげで非常に充実した四日間でした。心の底から感謝しています。
Trishさん宅
ゴールドコーストから二時間半くらいかけてTrishさんのおうちに行ってきました。Trishさんのおうちにたくさんのワラビーやカンガルー、猛禽類、インコ、ハリモグラなどの動物がいて、一人でお世話していると思えないほどのバリエーションに驚きました。こんなたくさんの野生動物をお世話するのにどれくらい豊富な知識が必要なんでしょうと考えたらTrishさんへの尊敬が深まりました。今回急遽カランビン野生動物病院でのコアラ解剖が入ったためTrishさんのところでの滞在時間が少し短くなったので、ワラビーの赤ちゃんにミルクをあげて他のところを一周回ったら時間が無くなりました。短い間ではありましたが、Trishさんからたくさん野生動物の麻酔やハリモグラの繁殖、ワラビー種類の見分け方などたくさん教えていただいたのでとても収穫の多い4時間でした。Trishさんは今クイーンズランド大学でハリモグラの研究をなさっているようで、どのような結果が出るのか非常に楽しみです!!
今回この上級トレーニングコースに参加できて本当によかったと思います。たくさん勉強できたのみならず、オーストラリア特有の動物をたくさん見られて、私の大好きなカンガルーと触れ合えて、素敵な仲間に出会えること全てに感謝感激です。トレーニングコースが無事に終われるのは全てAJWCEFの職員の皆様のおかげです。この場を借りて深くお礼を申し上げます。水野先生、あやこさん、ゆうこさんおよびあやさん、ありがとうございました。
H.E 大学4年
2年前私が通っている大学でコアラのウイルスについての講義があり、その時にあったAJWCEFのインターンシップの紹介を聞いてオーストラリアの野生動物獣医療に興味を持ちました。初級コースに参加していなくても大学3年おわりの春から上級コースに参加できるということで、それまで待ち今回参加することができました。
プログラムはday1: David Flay Wildlife Parkへ行きオーストラリアの野生動物とはなにか、その暮らしなどを見て学ぶ day2:カヤックで川下りをし、そこに住む野生動物の観察 day3、4、5、6:Currumbin Wildlife Sanctuary内の動物病院で実習 day7:ケアラーさんから野生動物について学ぶというものでした。プログラムに参加して、日本でいう野生動物とオーストラリアでいう野生動物はそもそも全く違う動物たちであること、政府などからの扱われ方も違いとても驚きました。このプログラムに参加する前、野生動物といえばアライグマ、キツネ、タヌキ、野鳥などが思い浮かび、将来獣医になったらそんな動物が運ばれてくるのかな、もし来たらどうやって治療するんだろう、オーナーさんはいないしきっと治療費は自己負担なんだろうな、だから忙しいペット病院は野生動物診療を一切受け付けなかったりするのかなとぼんやりと考えていました。プログラムに参加して、オーストラリアでいう野生動物はオーストラリア固有種のことで、その中には政府から保護されている鳥がいたり、病院内の様子をガラス越しに動物園に訪れたお客さんも見学できることで寄付金が集まっていたり、私が考えていた野生動物のイメージやその診療は全く違うものでした。まだ大学では臨床実習も始まったばかりで、診療に関しては見るもの聞くもの新しいことの連続でしたが動物病院の獣医さんやAJWCEFのスタッフのみなさんのご協力もあり、とても分かりやすく理解することができました。これからは今回の経験を生かし、広い視野を持って獣医療ができる人を目指して頑張っていきたいと思います。
今回のプログラムでサポートしてくださったAJWCEFスタッフのみなさま、動物病院の先生方、Flying FoxesやMicrobatsの説明をして下さったスタッフのみなさま、ケアラーさん全ての方々に感謝申し上げます。ありがとうございました。
E・C 大学生
長年参加したかったトレーニングコースに参加することができて嬉しく思います。
上級コースは英語でのレクチャーとなるため不安が大きかったのですが、AJWCEFの方に日本語通訳をして頂けたし、自分が片言の英語で質問してもどの施設の方々も優しく分かりやすく答えてくださったのでとても勉強になりました。
Currumbin Wildlife Hospital (CWH)での実習は密度の濃いもので、血液検査や内視鏡、レントゲン検査などの医療を無償で行っていることに驚きました。毎日多くの動物の治療が行われており、哺乳類以外の麻酔のかけ方、骨折治療の仕方など、日本では学ぶことのできない多くのことを学ぶことができました。病院がガラス張りで、病院内で行っている治療の様子やエサの準備の様子が園内を訪れた誰もが見ることができるので、多くの人に野生動物の保護に興味を持ってもらい、協力してもらうことができると思いました。
また、 David Fleay Wildlife Park(DF)や個人で野生動物の保護を行っているトリッシュさん宅訪問で、主に野生動物の飼育管理についても学ぶことができます。日本の動物園が個体展示で、例えば鳥インフルエンザなど外界からの感染症をもらわないようにしているのに対し、DFでは生体展示を行い、野鳥の出入りもできるという違いに驚きました。
生体展示を行うことで動物が本来持つ野生での生き方に近い状態を作り出し、動物へのストレスを軽減させることができるし、人間もその姿を見ることができます。トリッシュさん宅では怪我をしたり親を亡くした動物の飼育管理を勉強させていただきました。最終的には野生に返すので人間慣れしすぎないように、群れで行動する動物は複数の個体で自然に返すなどの工夫がありました。野生動物はまだまだ分からないことの多い動物なので、どのミルクを使うのかというレベルから模索してこられたようで、野生動物の保護がいかに難しいか実感しました。
また全体を通じて、オーストラリアでは人が生態系の一部にいるという考え方が主流で、人に害を加える動物=害獣ではなく、人の活動によって外から持ち込まれた動物=害獣という考え方が日本とは全く違っていました。野生動物の保護は個体の保護や生態研究にとどまらず、環境や人間活動とのつながりまでも考えなければならないのだと感じました。今回勇気を出してこのプログラムに参加し、日本では学べない知識、技術、考え方を学ぶことができ本当に良かったです。
Y・Y 大学生
今回のプログラムへの参加は、1年半の思いを経てようやく!というものでした。そのため期待がどんどん膨らんでいたのですが、実際はその期待を遥かに上回る充実した濃い実習が待っていました。
小動物診療に進もうと考えていた私は今まで野生動物の診療や野生動物保護を行うケアラーさんについての知識はほとんどありませんでした。ただ、普段日本で生活している中で、動物に対する考えが進んでいるオーストラリアにおける獣医師、一般の方、環境はどのようなものなのか、私が生きてきた日本とどう違うのか、ずっと知りたいと思っていました。
参加してすぐ感動したのは、まず街と自然が融合していることです。そして、歩道脇の草木や飛び回る野鳥の種類の多さ、カヤックでみたオオコウモリの群の規模に驚き、それを取り巻く保護活動とかかえる問題、オーストラリアのもつ様々な現実を学ぶことができました。
カランビン野生動物病院ではカワセミ、ペリカン、コアラ、バンディクート、その他様々な動物を間近で見て、保定、挿管、麻酔の濃度や聴診の仕方から、素早い診察と優先順位の判断など、本当に細かいところまで教えていただきました。
他にも書きたい事は数え切れないほどあり、今まで見えていなかった世界が開けたように感じます。
人生の分岐点というと大げさに聞こえるかもしれませんが、私にとってはそれほど貴重で大切な経験となりました。
9日間という短い期間にもかかわらず毎日が新鮮な日々でもっと長く過ごしたように感じます。
最後に水野先生を始めとするAJWCEFのスタッフの皆様、現地でお世話になった方々、参加させてくれた両親に感謝申し上げます。
A・U 大学生
デイビットフレイ野生動物公園(DFWP)
日本の展示方法は同種の動物のみを同じエリアに飼育する「動物展示」が一般的ですが、ここの動物園の飼育方法は「生態系展示」を行っていて国によって展示方法が異なることに驚きました。トリ、エミュー、ワラビーなどが同じエリアに収容されていて動物たちの本来の姿に近い状態を見ることが出来ました。日本では動物は餌の時間まで退屈そうに寝ている姿が多いイメージなのですが、DFWPでは生き生きしているように感じられました。展示されている動物の特性に合わせて展示方法も工夫されていたので勉強になりました。
カランビン野生動物病院
大学の授業や実習では小動物(ラット・犬・猫)や大動物(牛・豚・馬)を学ぶとこはできても実際に野生動物の解剖や臨床的な事を学ぶことはなかなかできないのでとても新しいことばっかりでした。
ここでの実習で印象に残ったのはコアラの解剖です。繁殖障害のあるコアラで前日にやむなく安楽殺の決まったコアラを実習として用いさせていただきました。不妊のコアラは子孫を残せずなわばりにずっと生息することも多く生態系への影響が大きいことからやむなく安楽殺をすることがあるそうなのです。
ユーカリを食べるため盲腸がすごく大きかったのにはびっくりしました。ほかにもここには文字数的に書ききれないほど他の動物と解剖学的に違うところがたくさんありました。このような機会はもう一生ないと思います。私たちの勉強のために解剖をさせてもらったコアラ(ウィンキー)とこのような機会を提供してくださいましたCWHの先生方、AJWCEFのみなさんには感謝しかありません。本当にありがとうございました。
実習全体の感想
私の他は(1人友達はいましたが)知らない子ばっかりで10日間共同生活ができるか、現地の人と話せるのだろうかなど不安でオーストラリアに向かったのですが実習最終日はまだまだここで実習していたいという気持ちになっていてとても充実した10日間を過ごせました。実習中はみんな真面目なのですが、実習後はみんなで夕食の具材を買いに行ったり、星を見に夜散策をしたり、ホテルの中にあるプールに入ったりと、実習以外の時間も有意義に過ごせました。また現地の人が話しかけてくれて英語で会話をしたりフレンドリーな方が多かった気がします。実習が楽しく行えたのは、周りの友達にも恵まれたからと感じています。この実習に参加できて本当によかったと感じています。関わりのあったすべての皆さまお世話になりました、本当にありがとうございました。